シュンペーターは、「孤高の哲学者」と言われるが、得てして彼の理論は独特である。それと同時に、常に「個々の具体的な事象」には惑わされないし、かつそのような言語に反駁を加え続ける。シュンペーターは「経済学とは科学だ。」を信念に持ち続けたし、この本からも徹底した客観的な分析が述べられ続けている。
とはいえ、同じことを何度もいっているような気がしたり、「あの時の言葉はこういうことだったのか。」と思われることも多い。本人もそれを自覚しているのか、上巻のまえがきでも「この書物の中からなにものかを獲得できるとおもうほどの人は、これを熟読しなければならない。」といっている。たしかに冗長で複雑な言い回しが多いし、結局何が言いたいのか分からないことがおおい。おそらく原作(英語ないしドイツ語)で、関係代名詞を多用しているのであろうと推測するが、これはかの大哲学者カントにも当てはまる。おそらく執筆しながら思い出しつつ書いてるのかもしれない。
そのような学者は、得てして講義が面白い人が多いようだ。個人的にもシュンペーターは、理論の正当性や私の彼の理論の理解の程度はともかくとして、彼の「経済学とは科学である。」という姿勢には大いに共感を呼ぶところであるし、むしろ尊敬している。一重二重にも叶わぬ願望であるが、(時代的に、また英語とドイツ語が堪能でないなどの要因で、)彼の講義やゼミには参加してみたい。
内容についてだが、彼も土地や利子に関しては悩んだようである。「土地それ自体に価値はない。産業機械などと違って、それを見いだす機会が正常な経済循環のもとでは起こりえない。その用役が売買されるに過ぎない。土地の価値を意識することがある唯一の機会は、土地の売買によってのみである。それでもなお土地が売買されるというのは、偶発的で、浪費癖とか経済外的要因によるものであろう。」と云う。
また利子についても、「貨幣額の所有は大きな貨幣額を生むための手段である。またこのため、人々は営利生活において現在額を将来のそれに比して高く評価する。これは一種の打歩である。経済発展においては信用の授与と信用の獲得とは経済過程の本質的部分である。」とする。実際に商業信用は、自分の資本の限度を超えて事業を拡張したい時になされるわけで、その意味に於いて、正しいようにも思える。ただし手形割引などがこれに当てはまるのか・・・とも思うのだが、どうであろうか。
となかなか、難しい。ただし経験に基づく実体経済を具に研究しているのだ、と思う次第だ。なかなかどうして、現代資本主義を測るための指標の一つとなろう。
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経済発展の理論 下(シュムペーター): 企業者利潤・資本・信用・利子および景気の回転に関する一研究 (岩波文庫 白 147-2) 文庫 – 1977/11/16
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成熟した資本主義の複雑なメカニズムを分析した書物として、本書はケインズの『一般理論』と並ぶ古典的地位を占める。資本主義経済過程を循環‐発展の二段階的に把握し、革新・新結合という経済内部の自発的な発展力に着目し、信用・資本・利子・利潤・景気循環などの問題を統一的に解明する。シュムペーターはこの古典的な著作を二十歳代に書き上げた。彼は「エレガンス」という言葉を好んだが、まさに本書は優美な体系を備えた書物である。技術革新に表徴される現代資本主義の諸問題を理解するためには、まずこの一冊から読むべきであろう。
- 本の長さ275ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1977/11/16
- ISBN-104003414721
- ISBN-13978-4003414729
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1977/11/16)
- 発売日 : 1977/11/16
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 275ページ
- ISBN-10 : 4003414721
- ISBN-13 : 978-4003414729
- Amazon 売れ筋ランキング: - 65,959位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 72位経済思想・経済学説 (本)
- - 446位経済学 (本)
- - 474位岩波文庫
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年11月30日に日本でレビュー済み
2022年8月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
使えばなくなるお金の話から使わなければ貯まるまでの規模についてもう少し単純に記述できないものか。
経済には人の手が加えられるため複雑なのだろうか。
単純なものに記述できないものは学問と言えるのか疑問。
経済には人の手が加えられるため複雑なのだろうか。
単純なものに記述できないものは学問と言えるのか疑問。
2014年1月14日に日本でレビュー済み
先ずは、経済発展を伴わない、一定の軌道を循環的に回るだの経済活動から考えます。この発展を伴わない経済活動の様相を認識することによって、経済発展の理論はエレガントに導かれます。その方法は、一定の軌道に沿って循環する経済活動に対して、革新を遂行する企業家と、企業家に購買力として信用支払手段を提供する銀行家を加えることにより、経済の軌道はより発展した軌道に遷移するというものです。更に、本書は企業利潤や利子、景気循環についても経済発展の理論に基づいて解説しています。解説は非常に論理的であり、経済の多くの重要項目について大変参考になる知見を含んでいます。
経済発展の理論の主要部分の大半は上巻に収録されているため、下巻はやや面白みに欠けます(注;学術的には企業利潤の起源に関する考察は重要だと思いますが)。最終章では景気循環を経済発展の理論に基づいて説明しており納得する部分もありますが、発展を担う企業家が時間的に群をなして不均一に発生する理由については、妥当性が低いと思います。経済発展の理論については明確に説明していますが、革新を担う企業家自体については不明瞭という印象です。
経済発展の理論の主要部分の大半は上巻に収録されているため、下巻はやや面白みに欠けます(注;学術的には企業利潤の起源に関する考察は重要だと思いますが)。最終章では景気循環を経済発展の理論に基づいて説明しており納得する部分もありますが、発展を担う企業家が時間的に群をなして不均一に発生する理由については、妥当性が低いと思います。経済発展の理論については明確に説明していますが、革新を担う企業家自体については不明瞭という印象です。
2011年7月9日に日本でレビュー済み
下巻は第四章「企業家利潤あるいは余剰価値」第五章「資本利子」第六章「景気の回転」と、訳者あとがきを収録。上巻で示された経済循環・経済発展の筋書きの詳しいところを説いている。
第四章はシュンペーターといえば連想されるinnovationの担い手である企業家の行動とその利潤獲得の経路を示し、第五章で消費利子や単純な生産利子と異なるものとして取り上げられる資本利子はそんな企業家利潤に源泉を負っていることを示し、第六章では好況から不況へ、不況から好況へと移り変わる景気変動の理由を前章までの議論と結び付けて解説する。訳者あとがきでは全篇の議論を簡潔にまとめてくれている。
読み通してみると、企業家という効き目が経済発展全体を牽引して影響を与えていくという筋での理論構築が、話の節目節目に現実の感覚で裏打ちされているおかげで説得力を増しているのがユニークだと思った。普段の生活では大多数の人たちが慣性に従っていることや、リスクテイカーとしての企業家はいずれ誰でも企業家でなくなるという指摘、企業家がある時期に群れを成して登場することやその突破口になる個人の重要性など、通念としての経済理論では語られないかもしれない切り口が新鮮だった。それでも議論全体は経済構造上の要素の相互作用についての考察という経済学の範疇を離れるものではなく、優れて経済学的思考が展開されている。
ケインズの「雇用、利子および貨幣の一般理論」と議論内容が触れ合っている様子も見えるのが興味深い。三部作の中では最も大胆で読み味の愉しい著書。
第四章はシュンペーターといえば連想されるinnovationの担い手である企業家の行動とその利潤獲得の経路を示し、第五章で消費利子や単純な生産利子と異なるものとして取り上げられる資本利子はそんな企業家利潤に源泉を負っていることを示し、第六章では好況から不況へ、不況から好況へと移り変わる景気変動の理由を前章までの議論と結び付けて解説する。訳者あとがきでは全篇の議論を簡潔にまとめてくれている。
読み通してみると、企業家という効き目が経済発展全体を牽引して影響を与えていくという筋での理論構築が、話の節目節目に現実の感覚で裏打ちされているおかげで説得力を増しているのがユニークだと思った。普段の生活では大多数の人たちが慣性に従っていることや、リスクテイカーとしての企業家はいずれ誰でも企業家でなくなるという指摘、企業家がある時期に群れを成して登場することやその突破口になる個人の重要性など、通念としての経済理論では語られないかもしれない切り口が新鮮だった。それでも議論全体は経済構造上の要素の相互作用についての考察という経済学の範疇を離れるものではなく、優れて経済学的思考が展開されている。
ケインズの「雇用、利子および貨幣の一般理論」と議論内容が触れ合っている様子も見えるのが興味深い。三部作の中では最も大胆で読み味の愉しい著書。
2003年9月30日に日本でレビュー済み
本著の内容は確かに難しいです。
しかしながら、経済発展の理論について
当時の状況を考えながら、本著を読むことで
頭の中を資本主義で回転させることができる楽しさを
味わうことができます。
シュンペーター氏は、ハーバードで
経済学のテキストで有名なサミュエルソン氏の先生であったことが
有名でありますが
当時、これほど凄いことが、あの時代の状況で研究されていたことを
知ることは重要でないのかと考えます。
しかしながら、経済発展の理論について
当時の状況を考えながら、本著を読むことで
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味わうことができます。
シュンペーター氏は、ハーバードで
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有名でありますが
当時、これほど凄いことが、あの時代の状況で研究されていたことを
知ることは重要でないのかと考えます。
2004年3月25日に日本でレビュー済み
Schumpeterは、経済学の古典的存在として取り上げられることが多いが、
実際には経営学の企業家精神の研究をするとき、必ずと言って出てくる。
そしてこの本のイノベーションの定義が例外なくといっていいほど使われる。
経済学だけではなく経営学としても読む価値がある。
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