1930年代のアメリカのどこかの都市。そこでは、悪党たちが蠢き、街を我が物にしようと覇権争いが繰り返されていた。ある晩、ギャングのビッグ・ボーイ・キャプリス(アル・パチーノ)は、クラブ・リッツのオーナー、リップス(ポール・ソルヴィーノ)を殺して死体を隠蔽し、彼の情婦ブレスレス(マドンナ)を手に入れる。街から悪党を一掃しようと戦う刑事ディック・トレイシー(ウォーレン・ベイティ)は、早速、リップス失踪事件の捜査を開始するのだが…。
漫画家チェスター・グールドが、1931年10月4日の"Detroit Mirror"紙で連載を開始した『ディック・トレイシー』。タフな刑事トレイシーが、街の治安を乱す奇怪な悪党たちと戦う物語は、瞬く間に人気となり、すでに、1940年代に、リパブリック社が
連続活劇版シリーズ
として映画化したことは良く知られているが、本作は、カラー映画化作品としては最初のものとなる。日本劇場公開は、1990年12月14日。
本作のアプローチは、原作漫画のスタイルと世界観を出来うる限り、実写作品としてそのまま再現することのようで、目にも鮮やかなカラー設計、丁寧に作り込まれた街のセット、クセの強い悪党たちの精妙なメイク…など、まさに、漫画そのままという感じ。監督・主演を務めたベイティのこだわりというか、ほとんど強迫観念に囚われたかのような細部に至るまで綿密に構成された作風が魅力的な作品だ。
原作漫画に倣い、赤、青、黄、緑、オレンジ、紫を使って、ヴィットリオ・ストラーロは繊細な照明と撮影で、非現実的世界の画作りをしている(『
レッズ
』でも、ベイティと組んだが、作品のルックは全く違う)。明るい色彩の街で繰り広げられるトレイシーと悪党たちとの激しい攻防戦は、人工的なおとぎの世界に、1930年代の『暗黒街の顔役』やワーナーのギャング作品の荒っぽさや暴力性を盛り込んだ大人の遊戯のようで、その不思議なミスマッチが何とも楽しい。マシンガンでの襲撃やセメント詰めなどの場面もあるのだが、あくまで様式的(記号的と言っても良いかもしれない)なものなので、血生臭さや生々しさとは無縁の軽やかな(時にはユーモアが添えられた)タッチで貫かれている。
ベイティは、黄色い帽子にコートを羽織り、タフで(その一方で、恋人のテスになかなか結婚の話を切り出せないシャイな一面もある)正義感が強いトレイシーそのままという感じで、颯爽と気持ち良さそうに演じている。マドンナの歌姫ブレスレスも、色香たっぷりでトレイシーを幻惑するファム・ファタ―ル的存在感を放っている。
クセの強い悪役たちが原作に忠実な相貌で出て来るのも本作の観どころのひとつだが、アル・パチーノ(ビッグ・ボーイ)、ジェームズ・カーン(スパルドーニ)、ダスティン・ホフマン(マンブルズ)が、比較的素顔がわかる以外、ウィリアム・フォーサイス(フラットトップ)、ヘンリー・シルヴァ(インフルエンス)、R・G・アームストロング(プルーンフェイス)などは、過度な特殊メイクで素顔が全くわからないのがちょっと勿体ない気もするが、ある意味、贅沢すぎる俳優の使い方とも言えるのだろう。
勧善懲悪の単純明快なヒーローものということもあり、話はストレートで深みはないものの、全編に渡る凝りに凝った視覚的意匠がとにかく目に楽しく、ベイティのこだわりが結実した意欲作になっていると思う。
本Blu-rayのマスターが、35mmのどの世代の素材から作られたのかは不明だが、ストラーロの色使いを再現した鮮やかな発色、細やかなディテール表現ともに素晴らしい画質になっている。
5.1ch DTS-HD マスター・オーディオの音声も、繊細かつ大胆で文句なし。日本語吹替え音声が収録されているのも、ファンには嬉しいだろう。
残念ながら特典などは一切ないが(メイキングなどがあると嬉しかった)、本編が素晴らしい質で楽しめるようになったことが何より嬉しい。
ディック・トレイシー ブルーレイ [Blu-ray]
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購入オプションとあわせ買い
フォーマット | 色, ドルビー, DTS Stereo, ワイドスクリーン, 字幕付き, 吹き替え |
コントリビュータ | アル・パチーノ, マドンナ, ウォーレン・ベイティ, ダスティン・ホフマン |
言語 | 英語, 日本語 |
稼働時間 | 1 時間 45 分 |
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メーカーによる説明
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ディック・トレイシー ブルーレイ [Blu-ray] | ディック・トレイシー [DVD] | |
カスタマーレビュー |
5つ星のうち4.3
34
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5つ星のうち4.3
34
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価格 | ¥2,359¥2,359 | ¥1,385¥1,385 |
製品仕様 | Blu-ray, 通常版 | DVD, 通常版 |
発売日 | 2013/07/17 | 2006/01/25 |
商品の説明
1990年アカデミー賞(R)7部門ノミネート
3部門受賞の傑作!
『ディック・トレイシー ブルーレイ』
ウォーレン・ベイティ製作・監督・主演、アル・パチーノ、マドンナ、ダスティン・ホフマンといった豪華共演陣で贈る、ユニークで美しい色彩と映像で作り上げたアクション・アドベンチャー。原作コミックを忠実に再現し、赤、青、緑、黄、白、黒の6色しかない世界を徹底して描いた舞台設定、キャラクターたちの特殊メイクは圧巻です!
※商品情報は変更になる場合があります。
登録情報
- アスペクト比 : 1.78:1
- メーカーにより製造中止になりました : いいえ
- 言語 : 英語, 日本語
- 製品サイズ : 25 x 2.2 x 18 cm; 40 g
- EAN : 4959241714640
- 監督 : ウォーレン・ベイティ
- メディア形式 : 色, ドルビー, DTS Stereo, ワイドスクリーン, 字幕付き, 吹き替え
- 時間 : 1 時間 45 分
- 発売日 : 2013/7/17
- 出演 : ウォーレン・ベイティ, アル・パチーノ, マドンナ, ダスティン・ホフマン
- 字幕: : 英語, 日本語
- 言語 : 日本語 (Dolby Digital 5.1), 英語 (Dolby Digital 5.1)
- 販売元 : ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
- ASIN : B00CB6H360
- 原産国 : 日本
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 31,193位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- - 332位外国のアドベンチャー映画
- - 2,604位外国のアクション映画
- - 3,255位ブルーレイ 外国映画
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年3月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2015年8月28日に日本でレビュー済み
スタイリッシュだが、シリアスで固い。せっかくのキッズもチョイ役扱い。重い音楽が全体の調子を決めている。
マドンナがいい。最期の上向いた顎から首にかけてのラインがいい。
マドンナがいい。最期の上向いた顎から首にかけてのラインがいい。
2017年7月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
コミック画をそのまま映画にした、原色実写映画。普通の元ネタコミックからの実写版とは違います。マドンナとウォーレン・ベイティー以外は有名俳優でも素顔が分からないほどです。
2004年3月21日に日本でレビュー済み
「バッドマン」や「スパイダーマン」などのようなアメコミの実写映画化。
ストーリー自体は結構普通なんですけど、セットのドギツイ色彩感や
特殊メイクのアル・パチーノやダスティン・ホフマンの名演技
、スティーブン・ソングタイムのオリジナルを歌うマドンナ、等ユニークな
見所はたくさんあります。
ギャング映画っぽい雰囲気やマリリン・モンローのようなマドンナとか、
いかにもザ・ハリウッド映画的な面白さ満載の映画です。
ちなみに、この頃ウォーレン・ビーティーとマドンナは交際中で、そういう意味でも公開当時注目をあつめましたね。
ストーリー自体は結構普通なんですけど、セットのドギツイ色彩感や
特殊メイクのアル・パチーノやダスティン・ホフマンの名演技
、スティーブン・ソングタイムのオリジナルを歌うマドンナ、等ユニークな
見所はたくさんあります。
ギャング映画っぽい雰囲気やマリリン・モンローのようなマドンナとか、
いかにもザ・ハリウッド映画的な面白さ満載の映画です。
ちなみに、この頃ウォーレン・ビーティーとマドンナは交際中で、そういう意味でも公開当時注目をあつめましたね。
2017年7月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
公開当時劇場で見ました。ほとんど覚えていなかったので購入しましたが画像と音はなかなかいいです。キャシーベイツ出てたんですね。知らなかった。
2013年7月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
バートンバットマンが、ヒットしてアメコミブームになるかと思いきや、今の時代みたいにのらなかった一本作品ですが、脚本は、LAギャングストーリーに、似ているし、音楽はバートン風、共演者は、豪華なんだけどメーキャップし放題で、わかりにくい。原色を使った美術と衣装をブルーレイで、観てこそ 改めて発見が、多く良かった。愛すべき作品
2011年8月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
先日観た「ザ・スピリット」の出来が微妙で、食い足りない。
あぁ、そうだ、コミックなら、あの映画があったと思い出して
購入。さっそく観てみました。
開始早々、もう20年以上前に劇場で観たときのインパクトが
蘇り、コントラストの強い原色のコミック調の世界で繰り広げ
られるストーリーが、汗臭くも泥臭くもないのに、ちゃんとハ
ードボイルドなのもいい感じ、思わずニヤリとするシーンの連
続で最後まで楽しめました。
ウォーレン・ビーティは本作で、制作・監督・主演の三役を務
めたそうですが、まさに入魂の一作だったのではないでしょう
か。
アル・パチーノ、ダスティン・ホフマンの2大名優に、マドン
ナが絡む素晴らしいキャストを、脚本と世界観がしっかり受け
止めて珠玉のような作品に仕上がっています。
あぁ、そうだ、コミックなら、あの映画があったと思い出して
購入。さっそく観てみました。
開始早々、もう20年以上前に劇場で観たときのインパクトが
蘇り、コントラストの強い原色のコミック調の世界で繰り広げ
られるストーリーが、汗臭くも泥臭くもないのに、ちゃんとハ
ードボイルドなのもいい感じ、思わずニヤリとするシーンの連
続で最後まで楽しめました。
ウォーレン・ビーティは本作で、制作・監督・主演の三役を務
めたそうですが、まさに入魂の一作だったのではないでしょう
か。
アル・パチーノ、ダスティン・ホフマンの2大名優に、マドン
ナが絡む素晴らしいキャストを、脚本と世界観がしっかり受け
止めて珠玉のような作品に仕上がっています。
2003年5月24日に日本でレビュー済み
ちょうど同じ頃、前後して、やはりアメリカンコミックのバットマンが映画化された。全体が黒や灰色のトーンで統一されたバットマンとは対照的にこの映画はアメリカンコミックそのまま、赤や黄色などの原色で統一されているところを注目。
コミックそのままのショットも当時は新鮮だった。
バットマンなんかより、こっちのほうがずっとスマートで面白い。
ベイティも前作のコメディ“イシュタール”でのずっこけた冴えないシンガーソングライターから、今回は生真面目で女性にはまるで不器用な(実生活の本人はまったく逆で有名だが)かっこいい正義のヒーローぶりがあまりにはまっている。
その自分の美しさを引き立てるためか、アル・パチーノ、ダスティン・ホフマンというビッグ・スターでさえ、特!殊メイクで彼らとわからないような怪物に近いメイクを施すという贅沢ぶりは、映画作家としてのベイティの余裕とも思える。ハリウッドでの彼ベイティの存在感、人徳か。
10年以上前の作品だが、X-MENなんかとは質も各も違う。
今でもオシャレで楽しめる秀作。
コミックそのままのショットも当時は新鮮だった。
バットマンなんかより、こっちのほうがずっとスマートで面白い。
ベイティも前作のコメディ“イシュタール”でのずっこけた冴えないシンガーソングライターから、今回は生真面目で女性にはまるで不器用な(実生活の本人はまったく逆で有名だが)かっこいい正義のヒーローぶりがあまりにはまっている。
その自分の美しさを引き立てるためか、アル・パチーノ、ダスティン・ホフマンというビッグ・スターでさえ、特!殊メイクで彼らとわからないような怪物に近いメイクを施すという贅沢ぶりは、映画作家としてのベイティの余裕とも思える。ハリウッドでの彼ベイティの存在感、人徳か。
10年以上前の作品だが、X-MENなんかとは質も各も違う。
今でもオシャレで楽しめる秀作。