『拾った女』(Pickup On South Street)('52)
出演∶リチャード·ウィドマーク、ジーン·ピーターズ、セルマ·リッター、ウィリス·ボーシェイ、リチャード·カイリー、マーヴィン·ヴァイ、ミルバーン·ストーン
監督∶サミュエル·フラー
スリの犯行現場から始まる物語で、スケールの小さな犯罪サスペンスへれ風の導入部だが、盗まれた財布に入っていたマイクロ·フィルムを巡って、ソ連のスパイ組織、米国内の共産主義グループ、FBI、地元警察を巻き込んで、命懸けのスパイ活劇(?)へと発展してゆくフィルム·ノワールだ。
N.Y.の地下鉄を縄張りとする腕利きスリのスキップ(ウィドマーク)は、満員の車両でキャンディ(ピーターズ)という女のバッグから鮮やかに財布を盗み、次の駅で素早く脱出に成功する。その時、キャンディに二人の捜査官が尾行についており、女の財布がスリに盗まれたことに気づいて慌てた様子なのを、スキップもキャンディも知る由もなかった。
弁護士のジョーイ(カイリー)から、財布に入った“あるモノ”を届けるメッセンジャーを依頼されていたキャンディは、財布を盗まれたことに気づき、ジョーイに電話する。蒼ざめるジョーイ。一方、共産主義グループによるソ連への機密漏洩を内偵中で、組織に利用されているフシのあるキャンディを追っていたFBI捜査官ザラ(ボーシェイ)らは、マイクロ·フィルムを奪ったスリの行方を追う。
スリの正体を追うFBIと地元警察は、女情報屋モー(リッター)への聴取から、前科3犯のスキップを割り出す。キャンディもまた、モーの情報を伝手にスキップに接近するのだった。
何も知らずに、ソ連の組織とFBIのスパイ戦のド真ん中に放り込まれてしまったスキップとキャンディ。フィルムを巡る駆け引きを通して、互いへの意識が芽生えるスキップとキャンディ。スキップの無事と事なきを得るためにフィルムを奪還してジョーイに返そうとするキャンディだったが、スキップは、フィルムをネタにして、組織から大金をせしめようと計略を巡らす。そんな彼らに組織の魔手が迫る……。
この時代('40〜'50年代)のフィル·ムノワールの例に漏れず、低予算·短期間撮影のB級映画の匂いが色濃く漂う作品だ。
B級フィルム·ノワールの中にも、“上”の作品と“凡”の作品があると思う。“上”の作品は、セリフ·小道具·撮影技法その他“金のかからない部分”で、見る者の感覚を楽しませる趣向が凝らされていたり、思わずニヤリとさせるモノがあったりする。
したたかな情報屋のモーが、小商い用の商品のネクタイをいつもカバンに詰めていて、情報を売るついでにネクタイ片手に饒舌なセールストークを披露して売りつけようとするのが面白いアクセントになっている。(実際、売りつけているw)
埠頭から海に突き出たスキップの住むボロ小屋の構造も面白い。細い渡り板のみで陸と繋がり、西部劇の建物並みに電気もなく、冷蔵庫替わりに海中に吊るした箱でビールを冷やすとともに、盗品などの隠し場所にもなる。B級映画らしい創意と工夫で色々と楽しませてくれる“上級”のB級映画(←矛盾した表現だが…)だ。
黒澤明監督の和製フィルム·ノワールの傑作『野良犬』('49)を思い出しました。あちらの主人公は警視庁の刑事で、射撃練習帰りにバスの中で、スリに拳銃を盗まれるのが発端。窃盗専門部署の協力でスリを特定し、そこからたどって拳銃貸出し組織に迫り、盗難銃の行方を追う話でした。
もっとも、『野良犬』の方が、舞台が多岐に渡り、屋内セットやオープン·セットの数がかなり多いので、金はかかってそうですが……。低予算·短期間の条件下で仕事をする“職人監督”サミュエル·フラーと、予算オーバー·撮影日程超過の“常習犯”黒澤明を比べてはいけませんねw
[余談] このころのフィルム·ノワールには、よく見られる傾向だが、出てくる男たち(主人公も含めて)が平気で女を殴るのである。この『拾った女』のヒロイン、ジーン·ピーターズなどは、何度も顔にアザを作った上に、拳銃で撃たれたりもします(死なないけど)。この時代のフィルム·ノワールやハードボイルドものって、最近のアメリカではTV放映は不可能でしょうね。『復讐は俺に任せろ』のグロリア·グレアムなんか、熱湯ならぬ“熱コーヒー”を顔に浴びせられてたなぁ。
[もひとつ余談] wikipediaで「フィルム·ノワール」を検索すると、その中に英国映画協会ほかが選出した「代表的な作品」として、20本のタイトルが挙げられているが、『拾った女』もランクインしている。
※ただし、その20本、ジョン·ヒューストン、ビリー·ワイルダー、ロバート·シオドマクやハンフリー·ボガートなど監督·主演者がダブってるものも少しはあるが、同一監督·俳優に偏り過ぎないように気を使った感じもあり、『脱出』『キー·ラーゴ』『黒い罠』など有名作品で漏れているものもあるみたいです。(20本は以下の通り)
[題名 監督 公開年]
⚫マルタの鷹 ジョン・ヒューストン 1941
⚫深夜の告白 ビリー・ワイルダー 1944
⚫ローラ殺人事件 オットー・プレミンジャー 1944
⚫ブロンドの殺人者 エドワード・ドミトリク 1944
⚫恐怖のまわり道 エドガー・G・ウルマー 1945
⚫殺人者 ロバート・シオドマク 1946
⚫ギルダ チャールズ・ヴィダー 1946
⚫三つ数えろ ハワード・ホークス 1946
⚫上海から来た女 オーソン・ウェルズ 1947
⚫過去を逃れて ジャック・ターナー 1947
⚫悪魔の往く町 エドマンド・グールディング 1947
⚫無謀な瞬間 マックス・オフュルス 1949
⚫裏切りの街角 ロバート・シオドマク 1949
⚫アスファルト・ジャングル ジョン・ヒューストン 1950
⚫サンセット大通り ビリー・ワイルダー 1950
⚫孤独な場所で ニコラス・レイ 1950
⚫拾った女 サミュエル・フラー 1953
⚫キッスで殺せ! ロバート・アルドリッチ 1955
⚫現金に体を張れ スタンリー・キューブリック 1956
⚫成功の甘き香り アレクサンダー・マッケンドリック 1957
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拾った女 [DVD]
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フォーマット | DVD-Video |
コントリビュータ | ジーン・ピータース, リチャード・ウィドマーク, セルマ・リッター, サミュエル・フラー, ジョー・マクドナルド |
言語 | 英語 |
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商品の説明
レビュー
監督・脚本: サミュエル・フラー 撮影: ジョー・マクドナルド 出演: リチャード・ウィドマーク/ジーン・ピータース/セルマ・リッター
-- 内容(「CDジャーナル」データベースより)
登録情報
- メーカーにより製造中止になりました : いいえ
- 言語 : 英語
- 製品サイズ : 25 x 2.2 x 18 cm; 83.16 g
- EAN : 4988182109222
- 監督 : サミュエル・フラー
- メディア形式 : DVD-Video
- 発売日 : 2004/6/25
- 出演 : リチャード・ウィドマーク, ジーン・ピータース, セルマ・リッター
- 字幕: : 日本語
- 販売元 : ジュネス企画
- ASIN : B00028XD8Q
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 145,803位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- - 14,338位外国のドラマ映画
- カスタマーレビュー:
イメージ付きのレビュー

5 星
裏通りのボーイ(スリ)・ミーツ・ガール(運び屋)。(2004年邦盤DVDレビュー)
仕様もメディアも製作国も異なる商品レビューがいつもながら不当に結合されているが、ASIN:B00028XD8Q、JAN 4988182109222のもの(日本 ジュネス企画社2004年)。原題:Pickup On South Street、1953年、米、モノクロ、80分、サミュエル・フラー監督、リチャード・ウィドマーク、ジーン・ピータース、セルマ・リッター出演)。ニューヨークのスリ(ハコ師、Pick Pocket)のスキップ(ウィドマーク)が地下鉄で女(ピータース)から手に入れた財布に入っていたものは共産スパイが持っていたある秘密を写したマイクロフィルムだった。そこから始まる警察・FBI・共産スパイの大暗闘、隠された真実のお話し・・とはならない。本作は大都会である日始まった、裏通りのボーイ・ミーツ・ガールのお話しだった。はっきりとは示されないながら何らかの過去を背負ったキャラ描写。おそらく陽の当る場所を歩いて来なかった(そして歩いていかないだろう)男と女たちだが、それでもどっこい生きてるウィドマークとピータースのたくましさに加え、いわゆるノワールと呼ばれそうな作風といささか異なる幕切れ。しかし、ネクタイ売りの行商のおばちゃんに扮するセルマ・リッターの、皮膚の奥まで諦観が浸み込んだ疲労の色濃い顔、眼・・。ちびた鉛筆を舐めて、売れたネクタイを小さなノートに書きつける姿・・。すごい。そして何と言うかカメラに肉感がある。人物に迫る時の浮かされたような熱があるカメラ。噴出する暴力、現在を生きる(そして現在しか見る余裕のない)男女の諦観や寂寥、それでも譲らない意地が画面から溢れる。人をフレームに収める時の的確さに感心した。俯角を多用したシャープでスマートなカメラワーク。作劇は唐突であり、やや粗いが大胆な省略がある。そしてウィドマークが暮らす埠頭の一軒家(家というより水上に建てた小屋)のロケーションが、窓から見える対岸の灯りが、夜の海の昏さが鑑賞後も観る者に強く残る。以下★まで、核心ではないですがリッターの顛末に触れています。普段はそっけない他人ながら似た者同士かもしれないウィドマークとリッター。彼が真っ暗な夜の海上で警察のボートから、身寄りのない、死んだリッターの棺を埋葬するため、受取るシーン。このさりげない情感。本作のベスト・シーンだ。★ウィドマークは快挙に暇がない。岸本加世子似のピータース(「革命児サパタ」「人生模様」「ナイアガラ」)はスレンダーで勝気ながらセクシーで体当たり演技を見せる。リッターはとにかく素晴らしい(当時48歳とは思えない疲れ具合)。代表作に「裏窓」「荒馬と女」「終身犯」「ある戦慄」等がある。コントラストの強い素晴らしいモノクロ撮影はジョー・マクドナルド(ジョセフ・P・マクドナルド、「暗黒の恐怖」「タイタニックの最後」「革命児サパタ」「地獄と高潮」「竹の家」)だ。ノワール映画の特徴はいろいろあろうが、本作は悪女、欲望、破滅等の要素は少な目ながら、最小限の要素(かな?と思う)、「男と女と夜と犯罪」が80分に凝縮している。サミュエル・フラーといえば後年の「ショック集団」「裸のキッス」等がよく語られる印象だが、熱さと冷たさの共存する本作ですでに質感・情感表現は出来上がっていると思う。蹉跌の道を歩いてきたアウトサイダーたちへの挽歌。フラーの映画はいつも「映画」だ。★オリジナルデータPickup on South Street, 1953,(US)製作・配給20th Century Fox, オリジナルアスペクト比(もちろん劇場公開時比を指す)、1.37:1、Spherical、80min, B&W, Mono, ネガ。ポジとも35mm★商品仕様リージョン2, NTSC映像仕様は4:3、画面アスペクト比:1.37:1(ほぼ、オリジナルである劇場公開比)80分片面?層、B&W音声:英語Mono字幕:日本語映像特典:なし 音声特典:なし発売:ジュネス企画、2004年★本サイトでヒットする他の商品(概略。データは内外アマゾンより):〇英盤:ASIN:B0002ADWIK、JAN:5060034571155(英Optimum Releasing, import PAL盤DVD、英語・日本語字幕ともになし)安い。ASIN:B00TR1P5ZS、JAN 5060000701654(英Eureka社、2015年、BD(リージョンB. 4K restoration)DVD(PAL盤, progressive encode)の2枚組。28頁ブックレート付。各種特典あり。3000円弱。〇米盤:ASIN: B00012L786、JAN:9781559409483(リージョン1DVD、クライテリオン版、英語字幕)。上記どれも対応した再生機が必要です。確認ください。〇邦盤ディスク:1種(ジュネス企画)本レビュー商品のみ。米盤BDは出ていないのかなあ。吹替えは要らないので廉価なBD邦盤を望む。下の画像は上記、英Optimum Releasing社import PAL盤DVDより。
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上位レビュー、対象国: 日本
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2022年8月27日に日本でレビュー済み
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2023年3月19日に日本でレビュー済み
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サミエル・フラー監督得意ジャンルの無駄なく詰めた80分フィルムノワールです。こんなに女性が殴り飛ばされ、情け無用に殺される映画は珍しい。発端は、女の財布をスリをやったリチャード・ウイドマークが、その中に国家機密のマイクロフィルムも入っていたために、警察、FBI,共産国スパイ団との争奪戦に巻き込まれる・・・という正に「パルプフィクション」でしたね。面白かった。ジーン・ピータースの訳アリ女と情報屋のおばさん(名前知らず、演技上手い) も適役で印象深い。双葉先生式で☆☆☆★★ですね。
2021年12月20日に日本でレビュー済み
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暴力シーンが話題になったというが、さほどのことはなかった。
堂々の主役になってウィドマークには殺し屋のイメージはなかったな。
刑事マディガンでも通用しただろう。
殺し屋ウィドマークだったら住所を教えなかったという女に心を許すとは思えないものな。
だんだんまともな人間になった来たぞ。
残念なのはスパイたちとFBIの立ち回りがなかったこと。
最近のアクションものとは違って大いに地味なんだが、最近のものの度が過ぎるのかもしれない。
見る側の感覚がマヒしてきているようだ。
貨幣価値の話だが、「地獄の英雄」で1ドル1000円から2000円の感覚だったから、情報料の50ドル、フィルムの恐喝2万5千ドルもそれなりに納得できる。
堂々の主役になってウィドマークには殺し屋のイメージはなかったな。
刑事マディガンでも通用しただろう。
殺し屋ウィドマークだったら住所を教えなかったという女に心を許すとは思えないものな。
だんだんまともな人間になった来たぞ。
残念なのはスパイたちとFBIの立ち回りがなかったこと。
最近のアクションものとは違って大いに地味なんだが、最近のものの度が過ぎるのかもしれない。
見る側の感覚がマヒしてきているようだ。
貨幣価値の話だが、「地獄の英雄」で1ドル1000円から2000円の感覚だったから、情報料の50ドル、フィルムの恐喝2万5千ドルもそれなりに納得できる。
2022年5月8日に日本でレビュー済み
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テンポよく進む。スリの住むボート小屋がユニークな作り。冷蔵庫替わりにビールを冷やす方法が、スッた物を隠す方法を兼ねているのも面白い。コミュニストを赤狩りした当時の米国の様子を垣間見れる。
2022年11月27日に日本でレビュー済み
■ 概要
出演はリチャード・ウィドマーク、ジーン・ピーターズ、セルマ・リッター。
キャンディ(ジーン)は恋人に言われて、ある物を届ける役をする。何が入っているかは知らない。
それを地下鉄の中でスリ取られた。恋人にせっつかれてスリを探し出した。スキップ(リチャード)。
調べていくと、恋人はスパイの手下であることが判明した。気がついたキャンディは今度はスキップと協力してスパイ組織と対決する。
■ 出演作
◆ リチャード・ウィドマーク
出演作は多い。悪役専門ともいえる。
「(1947)死の接吻/Kiss of Death」。共演はヴィクター・マチュア、コリーン・グレイ。ニック(ヴィクター)は服役していたが「妻子の面倒は見る」との仲間の約束が守られておらず仲間の情報を警察に教えた。妻は自殺していた。ヴィクターは仮出所して、別の犯罪者ユドー(リチャード)の動向を探るように依頼された。ヴィクターはネティ(コリーン)と言う女性と子供二人と暮らした。
ユドーの情報を掴み警察に報告した。警察は「これでヤツは有罪」と太鼓判を押したがユドーは無罪となった。今度はユドーから家族が命を狙われる状況となり、ヴィクターはユドーと対決に行く。
「(1950)街の野獣/Night And The City」。ハリー(リチャード)は往年の名プロレスラーのグレゴリウスと出会い、プロレスの興行を思いついた。自分が勤めるクラブの経営者のフィル(フランシス・L・サリヴァン)と妻のヘレン(グーギー・ウィザース)から金を借りることができた。しかしフィルはハリーを騙して金を貸さない。そしてグレゴリウスが手首を骨折する事故が起こった。
「(1953)拾った女/Pickup on South street」。共演はジーン・ピーターズ。知らずにスパイに使われていたキャンディ(ジーン)は、スリのスキップ(リチャード)と協力してスパイ組織と対決する。
「(1954)折れた槍/Broken Lance」。共演はスペンサー・トレイシー、ジーン・ピーターズ、ロバート・ワグナー。マット(スペンサー)は牧場主、四人の息子がいる。最後の一人ジョー(ロバート)は後妻の先住民との子供。鉱山から流れてきた汚染水で牛が死亡し、鉱山側とトラブルになった。
マットは起訴された。裁判は不利に進行した。ジョーは父親のことを思って身代わりとなった。三年の刑期。その間に他の息子たちは土地を鉱山側に売ろうとした。
「(1956)太陽に向って走れ/Run for the Sun」。共演はジェーン・グリア。作家のマイケル(リチャード)と記者のキャサリン(ジェーン)はメキシコのジャングルに不時着した。考古学の発掘にきていた三人の人物に助けられた。しかし三人はナチスのスパイであった。二人は彼らと対決して当地を脱出する。
「(1948)深夜の歌声/Road House」。共演はアイダ・ルピノ、コーネル・ワイルド、セレステ・ホルム。歌手のリリー(アイダ)はRoad Houseというクラブに来た。経営者のジェフティ(リチャード)はリリーが最初から好き。ある事件がきっかけでマネージャーのピート(コーネル)と付き合い始める。ジェフティはビートが売り上げを盗んだと言う。ビートは逮捕される。
「(1954)悪の花園/Garden of Evil」。共演はゲイリー・クーパー、スーザン・ヘイワード。フッカー(ゲイリー)たちはメキシコのミゲルに来た。酒場にいるとリー(スーザン)と言う女性が来て「落盤事故で夫が閉じ込められた。助けてほしい」という。リーも含めて五人で救出に出かけるが、非常に遠いところである。それと先住民がいる。夫のジョーを助け出して戻ろうとする。先住民の襲撃があり、次々と死亡者が出る。他は死亡したがフッカーはリーを安全圏に届けた。
◆ ジーン・ピーターズ
キリッと引き締まった感じの役を演じている。これがジーンの特徴である。しかし逆に言えば役柄の範囲は狭いともいえる。
ジーンは三回結婚・離婚しているが、二度目の結婚がハワード・ヒューズで、この時に結婚引退した。これがジーンの出演作が少ない理由。個人の選択なので私がどうのこうの言う問題ではないが、いかにも残念である。
「(1947)征服への道/Captain from Casile」。共演タイロン・パワーなど。ペドロ(タイロン)はシルヴァの虐待されていた召使コアトルを解放したことでシルヴァと対立し牢獄に捕らえられた。シルヴァを殺して脱出しカタナ(ジーン)という女性などとともにメキシコに渡った。
「(1948)海の呼ぶ声・ディープ・ウォーター/Deep Waters」。共演はダナ・アンドリュース。場所はメイン州の漁村。アン・フリーマン(ジーン)はソーシャルワーカー。漁師のホッド・スティルウェル(ダナ)と付き合っている。最近は漁師の事故が相次ぎ心配である。転職してほしいと思っている。
アンが担当している12歳の孤児ドニーがホッドと知り合って、ホッドがドニーを自分の船に乗せた。職務柄アンは抗議する。ドニーは悲観して村を出ていこうとして、費用を稼ぐために泥棒をする。アンとホッドは何とかできないかと相談する。
「(1950)ギャングと歌手と殺人/Love That Brute」。日本語版なし。コメディだが非常に洒落ている。歌を歌っている。共演はポール・ダグラス。歌手志望のルース(ジーン)は男やもめのエド(ポール)の元で彼の子供の面倒を見ることになった。
さらにエドの店で歌手となって活躍した。しかし本当はエドはギャングで何人も殺している。それを知ったルースは出て行こうとするが、エドの部下がエドの真実を話した。
「(1951)女海賊アン/Anne of the Indies」。ジーンの一番の推薦作。共演はルイ・ジュールダン。アン(ジーン)が船長をしている海賊船「シバの女王号」はイギリス船を襲撃し捕虜となっていたフランス人ピエール(ルイ)を解放し航海士として雇った。
しかしこの件でアンの師匠の黒髭と仲違いした。アンはピエールを好きになった。だがピエールには妻がした。そしてピエールはイギリス軍のスパイだった。アンはピエールと妻を捕らえて小さな島に置き去りにした。この時に黒髭のリヴェンジ号が近づいて来た。ここでアンはリヴェンジ号と対決する。
「(1952)人生模様・最後の一葉/O. Henry's Full House」。オー・ヘンリー短編集からのオムニバス。共演はアン・バクスター。ジョアンナ(アン)は吹雪の中を恋人を訪ねて行ったが振られた。また吹雪の中を帰って来た。途中で倒れて肺炎になった。
ジョアンナのアパートの向かいの家の壁にツタの葉が揺れている。ジョアンナはツタの葉が風で一つずつ落ちていくのを見ている。姉のスーザン(ジーン)や上に住んでいる画家のバーマンがジョアンナの病状を心配している。ツタの葉が最後の一つになった。
「(1952)ジャングルの逃亡者/Lure of the wilderness」。日本語版なし。共演はウォルター・ブレナン、ジェフリー・ハンター。ベン(ジェフリー)は沼地で行方不明になった犬を探しに行って、そこで暮らしているジム・ハーパー(ウォルター)と娘のローリー(ジーン)に出会った。
無実の罪で追われて八年間いると言う。ジムの無実を信じたベンはなんとかしたいと思って村に帰って事件を調べ保安官に会う。
「(1953)ヴィッキー・美人モデル殺人事件/Vicki」。こちらも日本語版なし。共演はジーン・クレイン、エリオット・リード。ヴィッキー(ピーターズ)はスティーヴ(エリオット)にスカウトされてモデルになった。さらにヴィッキーはハリウッドに行こうとスクリーンテストを受けた。テストには合格したが殺された。姉のジル(クレイン)、スカウトのスティーヴ(エリオット)も含めて数人の容疑者。
またアパートの管理者のハリーが姿を消した。一方刑事のエドは異様な執念でスティーヴに付きまとった。ヴィッキーは殺される役だが、回想場面がいっぱいあるので、ジーン・ピーターズの出演場面は多い。心配なく。
「(1953)拾った女・南通りのスリ/Pickup on South street」。「拾った女」という邦題はおかしい。共演はリチャード・ウィドマーク。キャンディ(ジーン)は彼氏のジョーイに言われて、ある物を届けに行ったが、途中でスリのスキップ(リチャード)にスリ取られた。
途中省略してジョーイはスパイの手下であることが判明。キャンディとスキップがスパイ組織と対決する。
「(1953)ナイアガラ殺人事件/Niagara」。共演はジョゼフ・コットン。ポリー・カトラー(ジーン)は新婚旅行でナイアガラに来た。宿に行ったが前泊のジョージ/ローズ・ルーミス夫妻がまだ残っていた。
ローズは愛人と共謀して夫のジョージ(ジョゼフ)を殺そうとした。しかし逆に愛人が殺された。さらにジョージはローズも殺した。ジョージはモーターボートでアメリカ側に渡ろうとしたが、そのボートにはポリーが乗っていた。ジョージは強引にボートを出発させるが、途中で故障して滝に近づいて行く。
「(1954)アパッチ・最後の戦い/Apache」。共演はバート・ランカスター。ついにジェロニモが降伏した。しかしアパッチの若者マサイ(バート)は承服しない。恋人のナリンリ(ジーン)は「降伏すれば命だけは助かる」と説得する。マサイが拒否するとナリンリは持って来たライフル弾を渡した。
マサイは捕らえられるが脱出する。そしてナリンリと逃亡。二人はゲリラ戦を展開する。さらに二人は農業を始めた。そしてナリンリが妊娠した。しかし居場所が騎兵隊に見つかる。
出演はリチャード・ウィドマーク、ジーン・ピーターズ、セルマ・リッター。
キャンディ(ジーン)は恋人に言われて、ある物を届ける役をする。何が入っているかは知らない。
それを地下鉄の中でスリ取られた。恋人にせっつかれてスリを探し出した。スキップ(リチャード)。
調べていくと、恋人はスパイの手下であることが判明した。気がついたキャンディは今度はスキップと協力してスパイ組織と対決する。
■ 出演作
◆ リチャード・ウィドマーク
出演作は多い。悪役専門ともいえる。
「(1947)死の接吻/Kiss of Death」。共演はヴィクター・マチュア、コリーン・グレイ。ニック(ヴィクター)は服役していたが「妻子の面倒は見る」との仲間の約束が守られておらず仲間の情報を警察に教えた。妻は自殺していた。ヴィクターは仮出所して、別の犯罪者ユドー(リチャード)の動向を探るように依頼された。ヴィクターはネティ(コリーン)と言う女性と子供二人と暮らした。
ユドーの情報を掴み警察に報告した。警察は「これでヤツは有罪」と太鼓判を押したがユドーは無罪となった。今度はユドーから家族が命を狙われる状況となり、ヴィクターはユドーと対決に行く。
「(1950)街の野獣/Night And The City」。ハリー(リチャード)は往年の名プロレスラーのグレゴリウスと出会い、プロレスの興行を思いついた。自分が勤めるクラブの経営者のフィル(フランシス・L・サリヴァン)と妻のヘレン(グーギー・ウィザース)から金を借りることができた。しかしフィルはハリーを騙して金を貸さない。そしてグレゴリウスが手首を骨折する事故が起こった。
「(1953)拾った女/Pickup on South street」。共演はジーン・ピーターズ。知らずにスパイに使われていたキャンディ(ジーン)は、スリのスキップ(リチャード)と協力してスパイ組織と対決する。
「(1954)折れた槍/Broken Lance」。共演はスペンサー・トレイシー、ジーン・ピーターズ、ロバート・ワグナー。マット(スペンサー)は牧場主、四人の息子がいる。最後の一人ジョー(ロバート)は後妻の先住民との子供。鉱山から流れてきた汚染水で牛が死亡し、鉱山側とトラブルになった。
マットは起訴された。裁判は不利に進行した。ジョーは父親のことを思って身代わりとなった。三年の刑期。その間に他の息子たちは土地を鉱山側に売ろうとした。
「(1956)太陽に向って走れ/Run for the Sun」。共演はジェーン・グリア。作家のマイケル(リチャード)と記者のキャサリン(ジェーン)はメキシコのジャングルに不時着した。考古学の発掘にきていた三人の人物に助けられた。しかし三人はナチスのスパイであった。二人は彼らと対決して当地を脱出する。
「(1948)深夜の歌声/Road House」。共演はアイダ・ルピノ、コーネル・ワイルド、セレステ・ホルム。歌手のリリー(アイダ)はRoad Houseというクラブに来た。経営者のジェフティ(リチャード)はリリーが最初から好き。ある事件がきっかけでマネージャーのピート(コーネル)と付き合い始める。ジェフティはビートが売り上げを盗んだと言う。ビートは逮捕される。
「(1954)悪の花園/Garden of Evil」。共演はゲイリー・クーパー、スーザン・ヘイワード。フッカー(ゲイリー)たちはメキシコのミゲルに来た。酒場にいるとリー(スーザン)と言う女性が来て「落盤事故で夫が閉じ込められた。助けてほしい」という。リーも含めて五人で救出に出かけるが、非常に遠いところである。それと先住民がいる。夫のジョーを助け出して戻ろうとする。先住民の襲撃があり、次々と死亡者が出る。他は死亡したがフッカーはリーを安全圏に届けた。
◆ ジーン・ピーターズ
キリッと引き締まった感じの役を演じている。これがジーンの特徴である。しかし逆に言えば役柄の範囲は狭いともいえる。
ジーンは三回結婚・離婚しているが、二度目の結婚がハワード・ヒューズで、この時に結婚引退した。これがジーンの出演作が少ない理由。個人の選択なので私がどうのこうの言う問題ではないが、いかにも残念である。
「(1947)征服への道/Captain from Casile」。共演タイロン・パワーなど。ペドロ(タイロン)はシルヴァの虐待されていた召使コアトルを解放したことでシルヴァと対立し牢獄に捕らえられた。シルヴァを殺して脱出しカタナ(ジーン)という女性などとともにメキシコに渡った。
「(1948)海の呼ぶ声・ディープ・ウォーター/Deep Waters」。共演はダナ・アンドリュース。場所はメイン州の漁村。アン・フリーマン(ジーン)はソーシャルワーカー。漁師のホッド・スティルウェル(ダナ)と付き合っている。最近は漁師の事故が相次ぎ心配である。転職してほしいと思っている。
アンが担当している12歳の孤児ドニーがホッドと知り合って、ホッドがドニーを自分の船に乗せた。職務柄アンは抗議する。ドニーは悲観して村を出ていこうとして、費用を稼ぐために泥棒をする。アンとホッドは何とかできないかと相談する。
「(1950)ギャングと歌手と殺人/Love That Brute」。日本語版なし。コメディだが非常に洒落ている。歌を歌っている。共演はポール・ダグラス。歌手志望のルース(ジーン)は男やもめのエド(ポール)の元で彼の子供の面倒を見ることになった。
さらにエドの店で歌手となって活躍した。しかし本当はエドはギャングで何人も殺している。それを知ったルースは出て行こうとするが、エドの部下がエドの真実を話した。
「(1951)女海賊アン/Anne of the Indies」。ジーンの一番の推薦作。共演はルイ・ジュールダン。アン(ジーン)が船長をしている海賊船「シバの女王号」はイギリス船を襲撃し捕虜となっていたフランス人ピエール(ルイ)を解放し航海士として雇った。
しかしこの件でアンの師匠の黒髭と仲違いした。アンはピエールを好きになった。だがピエールには妻がした。そしてピエールはイギリス軍のスパイだった。アンはピエールと妻を捕らえて小さな島に置き去りにした。この時に黒髭のリヴェンジ号が近づいて来た。ここでアンはリヴェンジ号と対決する。
「(1952)人生模様・最後の一葉/O. Henry's Full House」。オー・ヘンリー短編集からのオムニバス。共演はアン・バクスター。ジョアンナ(アン)は吹雪の中を恋人を訪ねて行ったが振られた。また吹雪の中を帰って来た。途中で倒れて肺炎になった。
ジョアンナのアパートの向かいの家の壁にツタの葉が揺れている。ジョアンナはツタの葉が風で一つずつ落ちていくのを見ている。姉のスーザン(ジーン)や上に住んでいる画家のバーマンがジョアンナの病状を心配している。ツタの葉が最後の一つになった。
「(1952)ジャングルの逃亡者/Lure of the wilderness」。日本語版なし。共演はウォルター・ブレナン、ジェフリー・ハンター。ベン(ジェフリー)は沼地で行方不明になった犬を探しに行って、そこで暮らしているジム・ハーパー(ウォルター)と娘のローリー(ジーン)に出会った。
無実の罪で追われて八年間いると言う。ジムの無実を信じたベンはなんとかしたいと思って村に帰って事件を調べ保安官に会う。
「(1953)ヴィッキー・美人モデル殺人事件/Vicki」。こちらも日本語版なし。共演はジーン・クレイン、エリオット・リード。ヴィッキー(ピーターズ)はスティーヴ(エリオット)にスカウトされてモデルになった。さらにヴィッキーはハリウッドに行こうとスクリーンテストを受けた。テストには合格したが殺された。姉のジル(クレイン)、スカウトのスティーヴ(エリオット)も含めて数人の容疑者。
またアパートの管理者のハリーが姿を消した。一方刑事のエドは異様な執念でスティーヴに付きまとった。ヴィッキーは殺される役だが、回想場面がいっぱいあるので、ジーン・ピーターズの出演場面は多い。心配なく。
「(1953)拾った女・南通りのスリ/Pickup on South street」。「拾った女」という邦題はおかしい。共演はリチャード・ウィドマーク。キャンディ(ジーン)は彼氏のジョーイに言われて、ある物を届けに行ったが、途中でスリのスキップ(リチャード)にスリ取られた。
途中省略してジョーイはスパイの手下であることが判明。キャンディとスキップがスパイ組織と対決する。
「(1953)ナイアガラ殺人事件/Niagara」。共演はジョゼフ・コットン。ポリー・カトラー(ジーン)は新婚旅行でナイアガラに来た。宿に行ったが前泊のジョージ/ローズ・ルーミス夫妻がまだ残っていた。
ローズは愛人と共謀して夫のジョージ(ジョゼフ)を殺そうとした。しかし逆に愛人が殺された。さらにジョージはローズも殺した。ジョージはモーターボートでアメリカ側に渡ろうとしたが、そのボートにはポリーが乗っていた。ジョージは強引にボートを出発させるが、途中で故障して滝に近づいて行く。
「(1954)アパッチ・最後の戦い/Apache」。共演はバート・ランカスター。ついにジェロニモが降伏した。しかしアパッチの若者マサイ(バート)は承服しない。恋人のナリンリ(ジーン)は「降伏すれば命だけは助かる」と説得する。マサイが拒否するとナリンリは持って来たライフル弾を渡した。
マサイは捕らえられるが脱出する。そしてナリンリと逃亡。二人はゲリラ戦を展開する。さらに二人は農業を始めた。そしてナリンリが妊娠した。しかし居場所が騎兵隊に見つかる。
2008年5月6日に日本でレビュー済み
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『鬼軍曹ザック』と並ぶ一般によく認められたサミュエル・フラー初期の傑作と目される作品です。個人的にはこれ以降のフラーの作品が好きなのですが、それはさておき、本編はそうしたフラー作品の原石ともよべるものでしょう。裏社会で懸命に生きる人々への愛情、やや無理のあるプロットを大胆に進めてしまうパワー、そのどれもがフラー的映画の布石なのですが、いかんせん構図にしてもカメラの動きにしても物語進行の合間にしてもどこか荒削りで画一的、しかもぎこちない部分が多いふうにも感じられます。また、フラー本来の破天荒なスタイリッシュさそのものが未だ完全に確立されていないというふうにも思えます。(生意気言ってすいません・・・。)もちろん、故リチャード・ウィドマークのクールさは最高にかっこいいし、ジーン・ピーターズのかわいさも相当いいです。そして忘れてはならないのはテルマ・リッターのけだるさの中に優しさを湛えたあの目、切な過ぎます。
2021年12月26日に日本でレビュー済み
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確かに1953年の邦題は、「拾った女」です。???。意味不明。