アル・ハリーリーの『マカーマート』が日本語で読めるようになりました。
丁寧な解説・注釈付きで長老アブー・ザイドの数々の物語が記されています。
アラビア語のローマナイズ表記に若干の疑問点はあるものの、全体として大変丁寧な興味深い作品に仕上がっています。
しかしながら、かつてのイスラーム学者には見られなかった偏見も指摘出来ます。
一例を示せば、少年愛を扱った第一〇話「ラフバのマカーマ」。
この滑稽譚の後に書かれた解説に「アラブ圏を訪れると、現地の男性同士、それもれっきとした大人同士が手をつないで歩く光景に驚かされ、それを同性愛と結びつけて気味悪く思う体験をした方もいよう」とあります。
同性間の愛情に対するこの種の偏見は今日の先進諸国では考えられないことです。
それは上の文を「現地のれっきとした大人の男女が手をつないで歩く光景に驚かされ、それを異性愛と結びつけて気味悪く思う体験をした方もいよう」と換言すれば、明白でしょう。
イスラーム圏に原理主義や過激派が台頭して来た影響で、かかる差別めいた表現を学者たる者がするようになったとすれば、ゆゆしき問題だと云わざるを得ません。
訳者の猛省を促す次第です。
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