信吾に何度叫びかけたことか。
「おい信吾っ!」「しっかりしろ!」「そうじゃないだろ!」「そっちかーい!」と。
ある場面などでは、
「行くんかーーーい!」と
飛び上がってしまったことを告白する。
要するに作者の意図にがっつりと嵌められた次第である。
この小説、主人公の信吾に尽きる。
彼の老年期の固まった信念があらゆる登場人物との微妙なズレを生み出す。
しかし、そのズレが登場人物のキャラを絶妙に際立たせる。
文体はたんたんとしている。まるで俳句。行間が極めて大きい。
相変わらずの川端節である。
ただこの小説を心の底から面白いと言えるには、
そこそこの人生経験が必要かもしれない。

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山の音 (新潮文庫) 文庫 – 1957/4/17
川端 康成
(著)
家族という悲しい幻想。夫と妻、親と子、姉と弟、舅と嫁。
日本独特の隠微な関係性を暴いた、戦後文学の傑作。
深夜ふと響いてくる山の音を死の予告と恐れながら、信吾の胸には昔あこがれた人の美しいイメージが消えない。息子の嫁の可憐な姿に若々しい恋心をゆさぶられるという老人のくすんだ心境を地模様として、老妻、息子、嫁、出戻りの娘たちの心理的葛藤を影に、日本の家の名状しがたい悲しさが、感情の微細なひだに至るまで巧みに描き出されている。戦後文学の最高峰に位する名作である。
本書「解説」より
この作品の中に具体的に描かれた「日本古来の悲しみ」は、日本の中流の家庭の、一種名伏しがたい暗い雰囲気だと思う。古くから持ち伝えた日本の「家」のなかの悲しさが、家族の感情の微細なひだに到るまで隈なく捕えながら、揮然と描き出されているのだ。(略)
日本の「家」を、そのあらゆるデテールにおいて、冷静に描き出したこの作品は、一方において、日本的感性の極致とも言うべきものだが、他方において、そこに作者のきわめて批判的な、知的な眼が働いていることを、認めないわけには行かないのである。
――山本健吉(文芸評論家)
川端康成(1899-1972)
1899(明治32)年、大阪生れ。東京帝国大学国文学科卒業。一高時代の1918(大正7)年の秋に初めて伊豆へ旅行。以降約10年間にわたり、毎年伊豆湯ケ島に長期滞在する。菊池寛の了解を得て1921年、第六次「新思潮」を発刊。新感覚派作家として独自の文学を貫いた。1968(昭和43)年ノーベル文学賞受賞。1972年4月16日、逗子の仕事部屋で自死。著書に『伊豆の踊子』『雪国』『古都』『山の音』『眠れる美女』など多数。
日本独特の隠微な関係性を暴いた、戦後文学の傑作。
深夜ふと響いてくる山の音を死の予告と恐れながら、信吾の胸には昔あこがれた人の美しいイメージが消えない。息子の嫁の可憐な姿に若々しい恋心をゆさぶられるという老人のくすんだ心境を地模様として、老妻、息子、嫁、出戻りの娘たちの心理的葛藤を影に、日本の家の名状しがたい悲しさが、感情の微細なひだに至るまで巧みに描き出されている。戦後文学の最高峰に位する名作である。
本書「解説」より
この作品の中に具体的に描かれた「日本古来の悲しみ」は、日本の中流の家庭の、一種名伏しがたい暗い雰囲気だと思う。古くから持ち伝えた日本の「家」のなかの悲しさが、家族の感情の微細なひだに到るまで隈なく捕えながら、揮然と描き出されているのだ。(略)
日本の「家」を、そのあらゆるデテールにおいて、冷静に描き出したこの作品は、一方において、日本的感性の極致とも言うべきものだが、他方において、そこに作者のきわめて批判的な、知的な眼が働いていることを、認めないわけには行かないのである。
――山本健吉(文芸評論家)
川端康成(1899-1972)
1899(明治32)年、大阪生れ。東京帝国大学国文学科卒業。一高時代の1918(大正7)年の秋に初めて伊豆へ旅行。以降約10年間にわたり、毎年伊豆湯ケ島に長期滞在する。菊池寛の了解を得て1921年、第六次「新思潮」を発刊。新感覚派作家として独自の文学を貫いた。1968(昭和43)年ノーベル文学賞受賞。1972年4月16日、逗子の仕事部屋で自死。著書に『伊豆の踊子』『雪国』『古都』『山の音』『眠れる美女』など多数。
- ISBN-104101001111
- ISBN-13978-4101001111
- 版改
- 出版社新潮社
- 発売日1957/4/17
- 言語日本語
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- 本の長さ400ページ
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出版社より
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雪国 | 伊豆の踊子 | 愛する人達 | 掌の小説 | 舞姫 | 山の音 | |
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価格 | ¥1¥1 | ¥1¥1 | ¥539¥539 | ¥3,030¥3,030 | ¥1,160¥1,160 | ¥1¥1 |
【新潮文庫】川端康成 作品 | 雪に埋もれた温泉町で、芸者駒子と出会った島村──ひとりの男の透徹した意識に映し出される女の美しさを、抒情豊かに描く名作。 | 伊豆の旅に出た旧制高校生の私は、途中で会った旅芸人一座の清純な踊子に孤独な心を温かく解きほぐされる──表題作など4編。 | 円熟期の著者が、人生に対する限りない愛情をもって筆をとった名作集。秘かに愛を育てる娘ごころを描く「母の初恋」など9編を収録。 | 優れた抒情性と鋭く研ぎすまされた感覚で、独自な作風を形成した著者が、四十余年にわたって書き続けた「掌の小説」122編を収録。 | 敗戦後、経済状態の逼迫に従って、徐々に崩壊していく”家”を背景に、愛情ではなく嫌悪で結ばれている舞踊家一家の悲劇をえぐる。 | 得体の知れない山の音を、死の予告のように怖れる老人を通して、日本の家がもつ重苦しさや悲しさ、家に住む人間の心の襞を捉える。〈野間文芸賞受賞〉 |
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女であること | 虹いくたび | みずうみ | 名人 | 眠れる美女 | 古都 | |
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恋愛に心奥の業火を燃やす二人の若い女を中心に、女であることのさまざまな行動や心理葛藤を描いて女の妖しさを見事に照らし出す。 | 建築家水原の三人の娘はそれぞれ母が違う。みやびやかな京風俗を背景に、琵琶湖の水面に浮ぶはかない虹のような三姉妹の愛を描く。 | 教え子と恋愛事件を引き起こして学校を追われた元教師の、女性に対する暗い情念を描き出し、幽艶な非現実の世界を展開する異色作。 | 悟達の本因坊秀哉名人に、勝負の鬼大竹七段が挑む……本因坊引退碁を実際に観戦した著者が、その緊迫したドラマを克明に写し出す。 | 前後不覚に眠る裸形の美女を横たえ、周囲に真紅のビロードをめぐらす一室は、老人たちの秘密の逸楽の館であった──表題作等3編。〈毎日出版文化賞受賞〉 | 捨子という出生の秘密に悩む京の商家の一人娘千重子は、北山杉の村で瓜二つの苗子を知る。ふたご姉妹のゆらめく愛のさざ波を描く。 |
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千羽鶴 | 川端康成・三島由紀夫 往復書簡 | 川端康成初恋小説集 | 少年 | |
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志野茶碗が呼び起こす感触と幻想を地模様に、亡き情人の息子に妖しく惹かれる中年女性を超現実的な美の世界に描く。続編「波千鳥」併録。 | 「小生が怖れるのは死ではなくて、死後の家族の名誉です」三島由紀夫は、川端康成に後事を託した。恐るべき文学者の魂の対話。 | 新発見書簡にメディア騒然!若き文豪が心奪われた少女・伊藤初代。「伊豆の踊子」の原点となった運命的な恋の物語を一冊に集成。 | 彼の指を、腕を、胸を、唇を愛着していた……。旧制中学の寄宿舎での「少年愛」を描き、川端文学の核に触れる知られざる名編。 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (1957/4/17)
- 発売日 : 1957/4/17
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 400ページ
- ISBN-10 : 4101001111
- ISBN-13 : 978-4101001111
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 152,514位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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(1899-1972)1899(明治32)年、大阪生れ。東京帝国大学国文学科卒業。
一高時代の1918(大正7)年の秋に初めて伊豆へ旅行、旅芸人の一行と知り合う。以降約10年間毎年、伊豆湯ヶ島湯本館に長期滞在する。菊池寛の了解を得て1921年、第六次「新思潮」を発刊。新感覚派作家として独自の文学を貫いた。1968(昭和43)年ノーベル文学賞受賞。1972年4月16日、逗子の仕事部屋でガス自殺を遂げた。著書に『伊豆の踊子』『雪国』『古都』『山の音』『眠れる美女』など多数。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2019年3月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2020年8月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ひたすらに美しい文章である。
初老を迎えた主人公の、自身の死への想い、長年連れ添った妻への愛情と懺悔、少年期憧れた女性への想い、女遊びの抜けきらぬ息子への忸怩たる想い、息子の妻への同情と愛情、子を連れて出戻った娘への無関心と後悔、孫への複雑な愛情、、、さまざまな想いを抱えながら淡々と日常は進んでいき、時が戻ることはなく。
淡々と、抑制の効いた文章、構成で描かれる作風は小津安二郎の東京物語などとも通じる、日本文化のひとつの美学の極致ではないかと思う。
自分が60歳を迎えた折に再読したい。
初老を迎えた主人公の、自身の死への想い、長年連れ添った妻への愛情と懺悔、少年期憧れた女性への想い、女遊びの抜けきらぬ息子への忸怩たる想い、息子の妻への同情と愛情、子を連れて出戻った娘への無関心と後悔、孫への複雑な愛情、、、さまざまな想いを抱えながら淡々と日常は進んでいき、時が戻ることはなく。
淡々と、抑制の効いた文章、構成で描かれる作風は小津安二郎の東京物語などとも通じる、日本文化のひとつの美学の極致ではないかと思う。
自分が60歳を迎えた折に再読したい。
2020年3月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
いまの時代は、文体などどうでも良いということになったらしいが、この小説の内容は、きっとこの文体でなければ出せない。
文体を無視して、どう面白い小説を書けるというのだろう。
それはカメラワークも台詞回しも全部無視して映画を撮っても、コマ割りやキャラクターのデザインの適当な漫画を描いても、滑舌が悪く口の悪い演説でも、話さえ作り込んでいれば面白いということだろうか?
まさか、私は字が汚いラブレターなんて嫌だよ。真剣に向き合ったら、下手なりにだって丁寧に書こうとするし、表現自体を無視するはずないじゃないか。
とりあえず、この本はとても良い。れっきとした小説である。
文体を無視して、どう面白い小説を書けるというのだろう。
それはカメラワークも台詞回しも全部無視して映画を撮っても、コマ割りやキャラクターのデザインの適当な漫画を描いても、滑舌が悪く口の悪い演説でも、話さえ作り込んでいれば面白いということだろうか?
まさか、私は字が汚いラブレターなんて嫌だよ。真剣に向き合ったら、下手なりにだって丁寧に書こうとするし、表現自体を無視するはずないじゃないか。
とりあえず、この本はとても良い。れっきとした小説である。
2013年4月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
書籍・文庫の検索購入はアマゾンに限ります。
基本通常送付であれば送料無料で到着も早く大変便利です。
文学ファン川端康成ファンにお勧めです。
基本通常送付であれば送料無料で到着も早く大変便利です。
文学ファン川端康成ファンにお勧めです。
2015年11月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書を読んでいると、匂いが感じられ
風を感じ、不安になり
不思議な感じ
私は、危険や殺気を臭いで感じるのですが
それとも違うし・・・
風を感じ、不安になり
不思議な感じ
私は、危険や殺気を臭いで感じるのですが
それとも違うし・・・
2016年4月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
酷いレビューを書かれている方もいる様ですが、これぞまさに小説!の感有り。お話とか物語というレベルからは一線を画しています。でもエロいですね〜
2019年4月16日に日本でレビュー済み
62歳の爺で戦後の実体験の皮膚感覚や、当時の家族の関係性には距離を感じざるを得ない。正直な話、この本の何が何が面白いのか良く分からない。人は同じ時を二度と繰り返すことはない故の主人公の戸惑い、逡巡が孫と暮らしてもいる『初老を迎えた心境』の一典型と言えなくはないが、「だからどうした?」なのだ。保子の人物造形には違和感を覚えないが、他がまるで芝居じみて感じる。それでも唯一ハイコントラストで楽しめたのが菊子と房子の美醜か。信吾は縁側で茶を飲むロリコン爺(=川端康成)としか思えなかった。川端で印象に残っている作品は月並みだが『伊豆の踊子』と『禽獣』(身震いした)、一方『雪国』のどこが面白いのか理解できない無教養な爺だ。それでも読み控えている本がまだある。次は『掌の小説』に手を出す。
2014年9月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
川端節で進む物語は、おしまいまで淡々として穏やかですが、一気に読ませる魅力はあります。いわゆる面白いというのではありませんが、登場する女性が、男が作り出す問題に翻弄されて誠に気の毒で、その後どうなるか知りたいというのが推進力になります。
解説や裏面表紙に、この小説が「日本の家の名状し難い悲しみ」を描き出しているとあります。そう書かれると、何となく高級で普遍的な雰囲気もある悩みが主題のようですが、実際のところは、男が女に対して思い通りに振る舞っても精々仕方ないで済まされた、実は今からそんなに前のことでもない、「発展途上の日本の情けない事情」を、残念ながらそういうことであるとまでは意識できずに描きだしたものです。
それはそれとして、しっとりとした、とてもいい小説でした。
解説や裏面表紙に、この小説が「日本の家の名状し難い悲しみ」を描き出しているとあります。そう書かれると、何となく高級で普遍的な雰囲気もある悩みが主題のようですが、実際のところは、男が女に対して思い通りに振る舞っても精々仕方ないで済まされた、実は今からそんなに前のことでもない、「発展途上の日本の情けない事情」を、残念ながらそういうことであるとまでは意識できずに描きだしたものです。
それはそれとして、しっとりとした、とてもいい小説でした。