本書は、葛飾北斎の90年の生涯と作品を、1~19歳「誕生・幼少年期」、20~35歳「習作の時代・春朗期」、35~45歳「宗理様式の時代」、45~52歳「読本挿絵と肉筆画の時代」、53~70歳「絵手本の時代」、71~74歳「錦絵の時代」、75~90歳「肉筆画の時代」と分けて、オールカラーでビジュアルに解説している。
私は、北斎に関して、代表作である「富嶽三十六景」のいくつかの作品や、ゴッホなどの印象派画壇に大きな影響を与えたこと、海外の雑誌で「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」(調べたところ、米雑誌『ライフ』が1999年に発表したものだった)で日本人として唯一選ばれたことくらいしか知らなかったのだが、本書に目を通して、少なからぬ驚きと発見があった。
まずは、あまりにも多様な対象を、多様な手法・技法で描き続けたこと(西洋の画家にはこのようなタイプはあまりいないのではないだろうか)。そして、多くの人々が抱く「風景版画家」としての作品(「富嶽三十六景」など)は70~74歳のわずか4年の間に制作されたらしいこと。さらに、75歳のときに発表した『富嶽百景』の跋文で、「70歳以前に描いたものは、実に取るに足らないものばかりであった・・・(精進し続ければ)80歳でますます向上し、90歳になればさらにその奥意を極めて、100歳でまさに神妙の域を超えるのではないだろうか。100何十歳となれば一点一格が生きているようになることだろう」と書き、90歳で死に際しても「あと十年、いや、せめて五年生かしてくれ。そうすれば、まことの絵描きになってみせる!」と執着ともいうべき作画への情熱を持っていたこと。。。などである。
北斎が、歌川広重とともに浮世絵のひとつのジャンルとして確立した名所絵(風景画)が、浮世絵の魅力を現代の人々にも伝えていることは間違いないが、北斎のエネルギッシュさと造形への飽くなき執念はそれに収まるものではなかったことがよくわかった。
コンパクトでありながら、北斎の持ち味と魅力が存分に味わえる良書。

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もっと知りたい葛飾北斎―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション) 単行本 – 2005/8/20
永田 生慈
(著)
- 本の長さ80ページ
- 言語日本語
- 出版社東京美術
- 発売日2005/8/20
- 寸法25.7 x 18.2 x 2 cm
- ISBN-104808707853
- ISBN-13978-4808707859
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商品の説明
出版社からのコメント
代表作「富嶽三十六景」全図(24頁)を巻頭に綴じ込み収録した「もっと知りたい葛飾北斎 改訂版」(本体価1800円+税)を刊行いたしました。
著者について
永田生慈
1951年、島根県津和野町生まれ。太田記念美術館副館長兼学芸部長、葛飾北斎美術館館長。美術評論家連盟会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1951年、島根県津和野町生まれ。太田記念美術館副館長兼学芸部長、葛飾北斎美術館館長。美術評論家連盟会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年4月28日に日本でレビュー済み
2017年2月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
すみだ北斎美術館で北斎の生涯を通じて変遷した画風はざっと知っていたのですが、改めてこの本でその生涯を辿ると、北斎の多様性を再認識させられます
。著者の永田生慈氏が「はじめに」で書いているように、”北斎の大きな魅力のひとつは、把握しがたいほど多彩な作域を示したことにあるといっていいだろう。”ということに納得がいきました。90歳で老衰で没した北斎ですが、「あと10年、いや、せめて5年生かしてくれ。そうすれば、まことの絵描きになってみせる!」と最期に話したといいます。本当にあと、5年、10年長生きしたら、また違った画風を生み出したと思われます。年老いても、変化し続ける、その生き様が、北斎の真骨頂なのだろうと思います。そして最も有名な富嶽三十六景に代表される錦絵は71歳から74歳の4年間に生み出されました。
。著者の永田生慈氏が「はじめに」で書いているように、”北斎の大きな魅力のひとつは、把握しがたいほど多彩な作域を示したことにあるといっていいだろう。”ということに納得がいきました。90歳で老衰で没した北斎ですが、「あと10年、いや、せめて5年生かしてくれ。そうすれば、まことの絵描きになってみせる!」と最期に話したといいます。本当にあと、5年、10年長生きしたら、また違った画風を生み出したと思われます。年老いても、変化し続ける、その生き様が、北斎の真骨頂なのだろうと思います。そして最も有名な富嶽三十六景に代表される錦絵は71歳から74歳の4年間に生み出されました。
2015年4月28日に日本でレビュー済み
江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎(かつしかほくさい1760~1849)の生涯の年譜、世界の時代背景と動き、彼が生きた時代と作品の全体像を知ることができました。
20年ほど前、フランスの印象派の画家展を観た時、モネやゴッホなどが多大な影響を北斎から受けたことを知りました。
1999年のアメリカの雑誌『ライフ』で、「この1000年で最も偉大な業績を残した100人」に選ばれた、ただ一人の日本人でもあります。
p44「これさえあれば絵が描ける」で、「円と角による作画法」は、この時代を考えると凄い!
今日、三重県菰野町のパラミタミュージアムで「北斎の富士 冨嶽三十六景と富嶽百景」展を観て、本書で彼の作品が脳裏によみがえります。
富士山が見られる土地、町、アイデア、人々の暮らしと姿が、活写されている。
実物の色合いと写真では当然違いはあるけど、北斎の凄さに納得の一冊です。
北斎の関連図書や、彼を主人公とした小説が読みたい気持ちです。
20年ほど前、フランスの印象派の画家展を観た時、モネやゴッホなどが多大な影響を北斎から受けたことを知りました。
1999年のアメリカの雑誌『ライフ』で、「この1000年で最も偉大な業績を残した100人」に選ばれた、ただ一人の日本人でもあります。
p44「これさえあれば絵が描ける」で、「円と角による作画法」は、この時代を考えると凄い!
今日、三重県菰野町のパラミタミュージアムで「北斎の富士 冨嶽三十六景と富嶽百景」展を観て、本書で彼の作品が脳裏によみがえります。
富士山が見られる土地、町、アイデア、人々の暮らしと姿が、活写されている。
実物の色合いと写真では当然違いはあるけど、北斎の凄さに納得の一冊です。
北斎の関連図書や、彼を主人公とした小説が読みたい気持ちです。
2013年2月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
葛飾北斎の生い立ちから修行時代、独立から天才の開花、そして死まで、代表作とともに順を追って分かりやすく記述してある。
これから北斎のファンになろうと思っている人にはもちろん、年季の入った北斎ファンにも面白く読めると思う。
北斎はわれわれ日本人が誇るべき同胞であり、目標とすべき偉大な先達である、と改めて思った。
これから北斎のファンになろうと思っている人にはもちろん、年季の入った北斎ファンにも面白く読めると思う。
北斎はわれわれ日本人が誇るべき同胞であり、目標とすべき偉大な先達である、と改めて思った。
2013年3月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
アマゾンで見つかりました。またほかの品物も探したいです。
届くスピードも抜群に早いです。
届くスピードも抜群に早いです。
2010年9月25日に日本でレビュー済み
90歳まで生きて、日本だけでなく世界にその名を知らしめた北斎の生涯と代表作を簡単に知ることができる好著です。
どうしても浮世絵版画である錦絵の北斎に目が行きますが、習作の時代や読本挿絵、肉筆画、絵手本と幅広い作品を取り上げ、よりその画業の素晴らしさを浮き彫りにするような編集がなされていました。
筆者の永田生慈氏は、太田記念美術館副館長兼学芸部長、葛飾北斎美術館館長で、北斎に関する著作が多い研究者です。
本書での特徴は、北斎の肉筆画の魅力を存分に伝えている所でしょうか。精緻な表現、豊かな色彩、個性的なモティーフ、どれをとっても1級品の作品です。実際に美術館で対面した時にその素晴らしさは実感できるでしょう。
36ページに掲載してありますが、「酔余美人画」での芸妓の表情、しぐさ、衣装、小道具など、見飽きない作品を紹介しています。首の角度は不自然なほど曲がっていますが、それがこの作品の個性を強調し印象付けているのです。
71歳から取りかかった「富嶽三十六景」がやはり有名で、52ページから掲載し説明を加えています。それぞれの作品の狙い、意図、隠れた意味などが説明されており、知っているようで知らない世界を分かりやすく解き明かしてくれました。「神奈川沖浪裏」などは、ドビュッシーに交響詩「海」の制作意欲を掻き立てたと言われているようなに、作品のインパクトは今でも如実に感じます。この作品をじっくりと眺めているとその凄みがまざまざと伝わってきます。
「北斎漫画」に代表される刊本や様々な肉筆画、妖怪画も収録してあり、画狂人という名にふさわしい活躍ぶりを確認できます。まさしく江戸時代を代表する絵師で、浮世絵の大家でした。
どうしても浮世絵版画である錦絵の北斎に目が行きますが、習作の時代や読本挿絵、肉筆画、絵手本と幅広い作品を取り上げ、よりその画業の素晴らしさを浮き彫りにするような編集がなされていました。
筆者の永田生慈氏は、太田記念美術館副館長兼学芸部長、葛飾北斎美術館館長で、北斎に関する著作が多い研究者です。
本書での特徴は、北斎の肉筆画の魅力を存分に伝えている所でしょうか。精緻な表現、豊かな色彩、個性的なモティーフ、どれをとっても1級品の作品です。実際に美術館で対面した時にその素晴らしさは実感できるでしょう。
36ページに掲載してありますが、「酔余美人画」での芸妓の表情、しぐさ、衣装、小道具など、見飽きない作品を紹介しています。首の角度は不自然なほど曲がっていますが、それがこの作品の個性を強調し印象付けているのです。
71歳から取りかかった「富嶽三十六景」がやはり有名で、52ページから掲載し説明を加えています。それぞれの作品の狙い、意図、隠れた意味などが説明されており、知っているようで知らない世界を分かりやすく解き明かしてくれました。「神奈川沖浪裏」などは、ドビュッシーに交響詩「海」の制作意欲を掻き立てたと言われているようなに、作品のインパクトは今でも如実に感じます。この作品をじっくりと眺めているとその凄みがまざまざと伝わってきます。
「北斎漫画」に代表される刊本や様々な肉筆画、妖怪画も収録してあり、画狂人という名にふさわしい活躍ぶりを確認できます。まさしく江戸時代を代表する絵師で、浮世絵の大家でした。
2017年9月18日に日本でレビュー済み
著者である永田生慈氏は「はじめに」で、北斎の長期の活動と多面的な才能の発揮について強調されています。ふつう、人々の知る北斎は活動の一部のみを知ることでイメージ化されているので、生涯全体を眺めて活動のすべてを知って欲しいと考えられています。
したがって構成は下記の通り6期に分けて紹介しています。
プロローグ 誕生・幼少年期
第1章 習作の時代・春朗記
第2章 宗理様式の時代
第3章 読本挿絵と肉筆画の時代〔ほか〕
第4章 絵手本の時代
第5章 錦絵の時代
第6章 肉筆画の時代
エピローグ 北斎、死す
有名な北斎を知るとともに知られてない北斎を知ることで偉大さがさらにわかったような気がしました。私は第4章の絵手本時代の活躍が特に印象に残りました。現代の漫画のルーツをそこに発見する人は多いはずです。
したがって構成は下記の通り6期に分けて紹介しています。
プロローグ 誕生・幼少年期
第1章 習作の時代・春朗記
第2章 宗理様式の時代
第3章 読本挿絵と肉筆画の時代〔ほか〕
第4章 絵手本の時代
第5章 錦絵の時代
第6章 肉筆画の時代
エピローグ 北斎、死す
有名な北斎を知るとともに知られてない北斎を知ることで偉大さがさらにわかったような気がしました。私は第4章の絵手本時代の活躍が特に印象に残りました。現代の漫画のルーツをそこに発見する人は多いはずです。
2017年12月17日に日本でレビュー済み
受け取りました。装丁も適切で、版画の大きさや印刷もきれい、北斎の業績についても、新たに知ったことが多くありました。購入してよかったです。