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そもそもJoe Jacksonという人は常に新しい音楽スタイルを求める人でした。
初期のパンクムーブメントに影響を受けたアルバムからスカやレゲエ、ジャズ、テクノ、オーケストレーション、とどれだけその時の音楽性が評価されようと、常に変化を求めてきました。
しかし、段々とその方法論も行き詰まりを見せ、アルバムLaughter&Lastで今までの全てをまとめ上げ、アルバム収録曲”Hit Single"でヒットを求める音楽会社との決別を宣言し事実上ポップミュージックからの隠遁生活に入ります。
まあそれでもアルバムは出しているんですが全曲インストとか、完全に趣味の世界に没頭。
なにかの義理なのか大ヒットアルバムNight&Dayの2を出すも、それもどこか妙に踏ん切りのつかないアルバムでした（でも好きですが）。
そしてインディー活動へ。
それからの彼はリハビリのように少しづつポップワールドに向かうアプローチに入ります。
デビュー当時のメンバーを集めてパブ・ロックなアルバム作ってみたり、ピアノトリオというミニマムな編成でアルバム作ってみたり。過去の作品に比べるとかなり地味な作品ばかりでしたが、それでもずっと彼を追うファンにしてみれば素晴らしい作品に聞こえました。
そして前作のデューク・エリントンのカバー集。
これは正直ポップな作品とは言い難いが、実は彼の音楽的冒険心が復活した充実作。After Life（余生）とまで名をつけたライブアルバムを作った彼には珍しい挑戦作でした。
そして遂に今作。
あのJoe Jacksonが本当に帰ってきました。優しくて辛辣でポップで実験的で、斬新なアプローチのあの彼が。泣きそうです。
アルバムがコンセプトまみれなのがまず良い。
NYサイド、アムステルダムサイド、ベルリンサイド、ニューオリンズサイドと銘打って、それぞれミュージシャンを変えて録音しています。どんだけ手間暇かけてんだって話です。
音楽性もNYならテレビジョンをカバーしたり、Night & Dayを髣髴とさせるバラードがあったり、ニューオリンズなら躍動的だったり、それでいてアルバム全体に一本芯が通っている感じ。素晴らしい構成力です。
勿論シングルとして聴けそうな超ポップな曲も収録と、枯れるどころか新人アーチストのデビュー作のような意欲的な力作になっています。
僕はアナログで購入したのでこのコンセプトがズッパまりで聴けましたが、出来るなら是非アナログで聴いてみるほうがより彼の提示した世界観が楽しめる気がします（ジャケットアートも良いし）勿論CDで一気に聴いてもその4つの音世界に浸ることは十分できますけどね。
本当にこれはやる気十分というかひとっつも才気が落ちてない彼を感じることが出来る傑作です。
過去に彼のファンでNight & DayとBody &Soulくらいは持ってる、なんて人は是非聴いてみると良いと思います。間違いないです。
このアルバム引っさげて来日してくれないかなぁ。
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