前景には、強い輪郭を持って描かれる、ある家族とそれを取り巻く個性的な人々。彼らの物語と、とりわけその饒舌な言葉と会話。
彼らの激しい人生の後景には、反ファシズム闘争から戦後に至るイタリアの現代史がある。しかし事件や出来事が日付を持って具体的に語られることは殆どない。歴史は黒いうねりのように背後に流れて、人々を揺さぶるが、全ては感傷を抑えて淡々と綴られる。その堅固な、ユーモアさえ交えた語り口そのものが、強靭な「抵抗」の表現である。
だから、ナタリアの夫、活動家レオーネの最後も、ただ「私たちがローマについて二十日目に、彼は逮捕された。そしてそれが別れだった。」とあるのみだ。とりたてて前衛的な手法は取られていないのに、かつて読んだことのないタイプの小説に出会った印象が残る。
地下活動、逮捕、流刑、亡命、と過酷な経験が続いても、そこに作者のヒューマンな視点があるから、物語は決して暗くならない。
癇癪持ちで、「何というロバだ」が口癖の大学教授である父親と、楽天的で、自分の母の死にうちひしがれ、喪服を買いに出かければ、黒い服の代わりに赤い服を買ってしまう(!)という母親。噛み合うような、噛み合わないような二人のやり取りも楽しい。恐ろしく口の悪い教授だが、間違いなく彼は家族の皆を深く愛している。
そして、パヴェーゼも出入りしたと言うエイナウディ社のくだりを読めば、須賀敦子がこれを読み感動し、「羨望と感嘆の入りまじった一種の焦燥感をさえおぼえた」ことを良く理解できる。ちょうどその頃、彼女もまたあのコルシア書店で夫と共に奮闘の日々を送っていたからだ。この作品との幸福な出会いが、作家「須賀敦子」誕生を促したのだとしたら、それは多くの日本の読書人にとっても、もう一つの大きな幸福であったことは間違いない。
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ある家族の会話 (白水Uブックス 120 海外小説の誘惑) 新書 – 1997/10/15
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イタリアを代表する女流作家の自伝的小説。舞台は北イタリア、迫りくるファシズムの嵐にほんろうされる、心優しくも知的で自由な雰囲気にあふれた家族の姿が、末娘の素直な目を通してみずみずしく描かれる。イタリア現代史の最も悲惨で最も魅力的な一時期を乗りこえて生きてきたある家族の物語。
- 本の長さ286ページ
- 言語日本語
- 出版社白水社
- 発売日1997/10/15
- ISBN-104560071209
- ISBN-13978-4560071205
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
ファシズムの嵐が迫る北イタリア。イタリア現代史の中で最も悲惨で最も魅力的な一時期を乗り越えて生きた、心優しくも知的で自由な家族の姿を、末娘の目を通してみずみずしく描く。再刊。
登録情報
- 出版社 : 白水社 (1997/10/15)
- 発売日 : 1997/10/15
- 言語 : 日本語
- 新書 : 286ページ
- ISBN-10 : 4560071209
- ISBN-13 : 978-4560071205
- Amazon 売れ筋ランキング: - 63,567位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 12位イタリア文学研究
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2023年1月6日に日本でレビュー済み
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2013年11月24日に日本でレビュー済み
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汚れもなく綺麗でした。翻訳本に慣れてないせいか 読むのに時間をかけ過ぎています
2020年10月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
淡々と、粛々と語られる家族の歴史、思い出。
作者は、ユダヤ系イのかnタリア人。
彼女の家族を中心に、第一次世界大戦以降第二次世界大戦過ぎまでの長い期間の交流を、おおよそは、筆者の記憶をもとに語られていく。
静かに穏やかに自らの記憶を探るように描かれている内容は、彼女の家族の極めて内的な事や、置かれている社会情勢であったり、政治的活動、社会活動などにより築かれている交流であったりする。
が、筆者の冷静で感情を抑えた語り口により淡々と粛々と語られていくのが、私がとても気持ちよかった。
この本の様に自分のことも思い出してみたくなった。
作者は、ユダヤ系イのかnタリア人。
彼女の家族を中心に、第一次世界大戦以降第二次世界大戦過ぎまでの長い期間の交流を、おおよそは、筆者の記憶をもとに語られていく。
静かに穏やかに自らの記憶を探るように描かれている内容は、彼女の家族の極めて内的な事や、置かれている社会情勢であったり、政治的活動、社会活動などにより築かれている交流であったりする。
が、筆者の冷静で感情を抑えた語り口により淡々と粛々と語られていくのが、私がとても気持ちよかった。
この本の様に自分のことも思い出してみたくなった。
2013年7月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ぼけっとして読んでるとなにがなんだかわからなくなる
この流れはどこからきたのか どこに流れるのか
この行とこの行のあいだの出来事は自分で感じとってねと言うことですか
ふしぎと迫害されるってこんなものなんだなとわかった気がした
読み方次第ではつまらないかもしれないけど わたしはこれ好きです
この流れはどこからきたのか どこに流れるのか
この行とこの行のあいだの出来事は自分で感じとってねと言うことですか
ふしぎと迫害されるってこんなものなんだなとわかった気がした
読み方次第ではつまらないかもしれないけど わたしはこれ好きです
2018年8月14日に日本でレビュー済み
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本は多く読む方だと思いますが、これは人生で最も感銘を受けた本の中の一冊です。若い頃読みましたが、再読のため購入しました。
単行本で入手できて、嬉しいです。
単行本で入手できて、嬉しいです。
2004年5月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
まず、やはり須賀敦子の名訳を賞賛せねばなるまい。
実に自然でこなれた文章である。このような名訳で読んだわけ
なので、この本の本質を理解できる、と思うわけだが・・・。
どうもいまひとつしっくりこなかった、というのが偽らざる
感想である。ギンズブルグの家族の行動様式・思考パターンに
共鳴できないせいだと思うのだが、エキセントリックにも
感じられるエピソードが多く、そこに懐かしさ、のような
もの(これを著者は感じているであろう)を感じる術を私は
持たなかった。もちろん、こういう特定のワードや行動で
家族を感じるという事実を理解はできるが、自分自身をこの
世界に投影できなかったということである。批判的なニュアンスは
一切ない。共鳴できる方も多いであろう、という想像はつく。
実に自然でこなれた文章である。このような名訳で読んだわけ
なので、この本の本質を理解できる、と思うわけだが・・・。
どうもいまひとつしっくりこなかった、というのが偽らざる
感想である。ギンズブルグの家族の行動様式・思考パターンに
共鳴できないせいだと思うのだが、エキセントリックにも
感じられるエピソードが多く、そこに懐かしさ、のような
もの(これを著者は感じているであろう)を感じる術を私は
持たなかった。もちろん、こういう特定のワードや行動で
家族を感じるという事実を理解はできるが、自分自身をこの
世界に投影できなかったということである。批判的なニュアンスは
一切ない。共鳴できる方も多いであろう、という想像はつく。
2015年7月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本の訳者である須賀敦子の書評を読んで、購入する気になりました。ギンズブルクの小説はこれが初めてですが、期待以上です。物語られるこのユダヤ系一家は、社会主義に理解もあり、ということはファシズム国家では常に危険にさらされていました。そんな時代の中で境遇がめまぐるしく変わっても父ベッピーノと母リディアの個性はきわだって、しかも一貫して動きません。この二人が日常交わす言い争いを中心に世界が回るかのように物語の最後もこの父母の会話で締めくくられるのですから。
イタリアの作家や社会主義者に興味を持っているので、トゥラーティとアンナ・クリショフ、サルヴァトレッリ、ピティグリッリ、パヴェーゼの名前を見つけてうれしかったです。
イタリアの作家や社会主義者に興味を持っているので、トゥラーティとアンナ・クリショフ、サルヴァトレッリ、ピティグリッリ、パヴェーゼの名前を見つけてうれしかったです。