監修は、京都美術工芸大学学長の河野元昭氏です。執筆陣は、大阪大学大学院教授の奥平俊六氏、大和文華館学芸部長の中部義隆氏、武蔵野美術大学造形学部教授の玉蟲敏子氏、京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科教授の並木誠士氏で、何れの方も琳派を中心に近世絵画の研究者で多くの著作を世に表している方がたでした。書き手の確かさが本書の質の高さに現れています。
河野元昭氏の「琳派400年の系譜を見わたす」から始まります。7ページに琳派の系譜が図で示してありました。大きな流れを俯瞰して知る上ではこれ以上ない簡単で分かり易い図版でした。
近年とみに「琳派」に脚光があたっています。江戸時代前期に俵屋宗達が確立した装飾画のジャンルを尾形光琳がさらに発展させたことにより、江戸時代を代表するような華麗なる装飾絵画が花開いたわけで、「琳派400年」に立ち会えたのは幸運です。このような出版も多いでしょうから。
なお「琳派」の「琳」とは、「美しい玉が触れ合って奏でる微妙な音を意味する漢字」だそうで、知りませんでした。基本的な事なのでしょうが。
奥平俊六氏の第1章「宗達と光悦がいた時代」からスタートします。まず年表を眺めて絵画の流れをつかみます。宗達の偉業をたどることは、その後の「琳派」の大きな流れを知る出発点になるわけです。
01の国宝の「風神雷神図屏風」は説明不要の名画です。02の「松島図屏風」は、海を渡りアメリカのフリーア美術館に所蔵されています。宗達の偉大さを再確認した思いにとらわれました。凄いです、本当に。美術品の海外流出は悲しいことですが、世界の人が宗達の素晴らしさをしっかりと理解してもらえる契機になればそれはそれで日本美術の素晴らしさの普及に役立っているのでしょう。
03の静嘉堂文庫美術館所蔵の「関屋澪標図(源氏物語)屏風」も華麗な6曲1双の作品で、美しいモティーフを披露してくれました。
04の「蓮池水禽図」での抽象的な雰囲気を醸し出す水墨画の美しさは比類のないものです。一つ一つ取り上げていけばきりがありません。
中部義隆氏の第2章「光琳と乾山―町衆文化の精華」も興味深い1章でした。
尾形光琳によって江戸時代を代表するような華麗なる装飾絵画が花開いたわけで、その残した芸術の素晴らしさはすでに評価が定まっています。「燕子花図屏風(34頁)」の美しさとその高い装飾的な芸術性を、本書において改めて確認することができました。
元禄時代の装飾家、アーティストとしての評価が定まった「紅白梅図屏風(36p)」は見事です。光琳の斬新性と時代を超えた意匠の奇抜さに関心が集まり、国内でのさらに高い評価へとつながったように感じています。
玉蟲敏子氏の第3章「宗達・光琳風意匠の展開から『尾形流』の成立へ」、並木誠士氏の第4章「近代の琳派―発見と継承、そしてデザイン」と意欲的な解説が続きます。本書を手に取って内容を確かめてください。読み応えがあります。
ラストには、監修者の河野元昭氏と田中一光氏(琳派的な特徴が表出した作品を残している方)による「対談 現代の琳派」でした。
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年譜でたどる 琳派400年 単行本 – 2015/1/23
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〈年譜でたどれば見えてくる。琳派400年の系譜〉
本阿弥光悦が鷹峰の地を拝領してから2015年で400年。その間、琳派の作風やデザインは、尾形光琳・乾山兄弟から酒井抱一へ私淑という形で受け継がれ、また神坂雪佳や田中一光ら近現代の作家に見直されながら生き続けてきました。各時代の年譜と多彩な作品をビジュアルに紹介しながら、江戸初期から現代へと繋がる琳派400年の系譜をたどります。
本阿弥光悦が鷹峰の地を拝領してから2015年で400年。その間、琳派の作風やデザインは、尾形光琳・乾山兄弟から酒井抱一へ私淑という形で受け継がれ、また神坂雪佳や田中一光ら近現代の作家に見直されながら生き続けてきました。各時代の年譜と多彩な作品をビジュアルに紹介しながら、江戸初期から現代へと繋がる琳派400年の系譜をたどります。
- 本の長さ111ページ
- 言語日本語
- 出版社淡交社
- 発売日2015/1/23
- ISBN-104473039889
- ISBN-13978-4473039880
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商品の説明
著者について
大阪大学教授
大和文華館学芸員
武蔵野美術大学教授
京都工芸繊維大学教授
京都美術工芸大学学長
大和文華館学芸員
武蔵野美術大学教授
京都工芸繊維大学教授
京都美術工芸大学学長
登録情報
- 出版社 : 淡交社 (2015/1/23)
- 発売日 : 2015/1/23
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 111ページ
- ISBN-10 : 4473039889
- ISBN-13 : 978-4473039880
- Amazon 売れ筋ランキング: - 416,059位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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2016年12月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
昨年は「琳派400年」を記念して様々な展覧会が催されたが、これを機に、改めて琳派を見直した人、或いは新たに興味を抱いた人も多かったのではなかろうか。
本書は、そんな方達を対象とした「見て楽しい、読んで解り易い」ハンド・ブックであり、多くの琳派愛好者にお勧めしたい一冊である。
さて「琳派400年」とは言うものの、その原点は何処まで遡る事が出来るのであろうか…?
そこで本書は「琳派とは何か」「琳派の系譜」について解説した上で、第一章「宗達と光悦がいた時代」、第二章「光琳と乾山-町衆文化の精華」、第三章「宗達・光琳風意匠の展開から“尾形流”の成立へ」、そして第四章「近代の琳派-発見と継承、そしてデザイン」に至り、琳派400年を全てカバーしている。
本書を読めば、琳派の歴史、流れと展開が良く解るであろう。
だが、本書の特色は、やはり「知識としての琳派」ではなく「感じる為の琳派」…即ち、その独特の芸術性を実感出来る事なのではなかろうか。
図版の紹介を中心とした本書は、著名な作品の数々を全てカラー写真で紹介しており、絵画、染色、工芸に至るまで、その装飾性の豊かさを満喫出来る。
勿論、全てを網羅している訳ではないが、実際の作品に触れる事に依って琳派が明らかに「狩野派」や「土佐派」とは違う事が理解出来るであろうし、本書の価値の高さもその具体性にあるように思う。
尚、非常にコンパクトな書籍なので、予てより琳派に造詣が深い方は若干の物足りなさを感じるかもしれないが、そのような方にとっても第四章は新鮮に違いない。
何しろ「琳派400年」と題しているだけあって、“現代の琳派”にまで言及しているのだ。
加山又造や松田権六の作品を観ると、成程、そこに「琳派」の息吹を感じる事が出来るし、琳派が決して江戸時代を以て終結した訳ではない事を知る事が出来る。
特に、デザイン分野で幅広く活躍した田中一光が琳派の影響を受けた事はよく知られるものの、実際には、オリンピック関連の仕事、或いはデパートの包装紙や数々のシンボルマークを考案した彼と「琳派」との共通点を見出せないと言う方もいるのではなかろうか。
そんな方は是非とも本書を手に取って頂きたい。
田中一光は正しく現代の「琳派」なのだ。
本書では巻末に田中一光と河野元昭氏に依る「現代の琳派」と言う対談も掲載されているので、田中一光の魅力の原点を知りたい方は必読である。
「入門書」と言う基本を抑えながらも、気の利いたスパイスを感じさせる一冊。
琳派の愛好家の方は言う迄もなく、日本のデザイン文化に関心のある方にとっても有用な解説書となってくれる事は間違いないと思う。
本書は、そんな方達を対象とした「見て楽しい、読んで解り易い」ハンド・ブックであり、多くの琳派愛好者にお勧めしたい一冊である。
さて「琳派400年」とは言うものの、その原点は何処まで遡る事が出来るのであろうか…?
そこで本書は「琳派とは何か」「琳派の系譜」について解説した上で、第一章「宗達と光悦がいた時代」、第二章「光琳と乾山-町衆文化の精華」、第三章「宗達・光琳風意匠の展開から“尾形流”の成立へ」、そして第四章「近代の琳派-発見と継承、そしてデザイン」に至り、琳派400年を全てカバーしている。
本書を読めば、琳派の歴史、流れと展開が良く解るであろう。
だが、本書の特色は、やはり「知識としての琳派」ではなく「感じる為の琳派」…即ち、その独特の芸術性を実感出来る事なのではなかろうか。
図版の紹介を中心とした本書は、著名な作品の数々を全てカラー写真で紹介しており、絵画、染色、工芸に至るまで、その装飾性の豊かさを満喫出来る。
勿論、全てを網羅している訳ではないが、実際の作品に触れる事に依って琳派が明らかに「狩野派」や「土佐派」とは違う事が理解出来るであろうし、本書の価値の高さもその具体性にあるように思う。
尚、非常にコンパクトな書籍なので、予てより琳派に造詣が深い方は若干の物足りなさを感じるかもしれないが、そのような方にとっても第四章は新鮮に違いない。
何しろ「琳派400年」と題しているだけあって、“現代の琳派”にまで言及しているのだ。
加山又造や松田権六の作品を観ると、成程、そこに「琳派」の息吹を感じる事が出来るし、琳派が決して江戸時代を以て終結した訳ではない事を知る事が出来る。
特に、デザイン分野で幅広く活躍した田中一光が琳派の影響を受けた事はよく知られるものの、実際には、オリンピック関連の仕事、或いはデパートの包装紙や数々のシンボルマークを考案した彼と「琳派」との共通点を見出せないと言う方もいるのではなかろうか。
そんな方は是非とも本書を手に取って頂きたい。
田中一光は正しく現代の「琳派」なのだ。
本書では巻末に田中一光と河野元昭氏に依る「現代の琳派」と言う対談も掲載されているので、田中一光の魅力の原点を知りたい方は必読である。
「入門書」と言う基本を抑えながらも、気の利いたスパイスを感じさせる一冊。
琳派の愛好家の方は言う迄もなく、日本のデザイン文化に関心のある方にとっても有用な解説書となってくれる事は間違いないと思う。