大変興味深い本.
「本土移転のシミュレーションさえしていなかった,日本政府の無策ぶり」(p.92)
「負担軽減の芽を摘み取る空幕」(p.94)
「横田という譲歩」(p.97)
「共存最優先」(p.98)
「日本外交の機能停止」(p.102)
「検討をストップする日本政府」(p.105)
「対案を考える意思すらなかった日本側」(p.105)
「日本政府,世論を盾にゼロ回答を予告」(p.113)
「守屋の動き」(p.124)
「極東条項空洞化を警戒する日本外務省」(p.135)
「死守しようとする条約局」(p.139)
「『どっちを向いて仕事をしてるんだ』と陰口を叩かれる防衛局長」(p.141)
「事務方の説明と実際訪米してみての落差を,外務省幹部に詰問する町村」(p.149)
「再編協議の主導権を堅持したい外務省」(p.152)
「町村提案を受け入れても事態は打開しないと判断するアメリカ」(p.155)
「声を荒げた事実は今も伏せられている」(p.168)
「公表されていないブラックマンの言葉」(p.180)
「岩国移転を,緊急性の高い再編案に格上げ」(p.182)
……それらが事実と確認できるならばね.
▼
本書の最大の問題は,全てが「○○筋」や「●●関係者」という匿名ソースである点.
これでは本書を客観的に検証するのが極めて困難.
著者が不誠実だとか言いたいわけではないが,人間には誰しもある程度の先入観が入る以上,どんな文献であれ,クロスチェックせずに迂闊に鵜呑みにすることは避けねばならないが,本書ではそのチェックができないため,「そういう話もある」程度の扱いとせざるを得ず.
そもそも,「一切公表されていない」会議の内容を,どうして著者は知ったのか?
リークであるなら,リーク主は何らかの政治的意図があって情報を漏らしているものと考えるのが常識であり,その内容を無批判に信頼する事は,リーク主の意図に踊らされかねない.
読者は十分用心すべき.
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なお,著者は,日本政府が「日米安全保障政策のありようを日頃から抗争する努力を怠っていた」とするが,「努力」だけの問題なのかどうか.
また,CIA職員はすべて諜報工作員であるかのような勘違い(p.145)もあり.
「米軍の削減を自衛隊で補完」(p.158-159)???
軍の装備の性格の違いを考えると考えにくい話だが,本当に防衛庁がそんな提案をしたのか?
▼
各種統計・図表は役に立つかも.
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類書との併読必須.
【関心率8.896%:全ページ中,手元に残したいページが当方にとってどれだけあるかの割合.当方にとっての必要性基準】

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米軍再編 (講談社現代新書) 新書 – 2005/11/18
久江 雅彦
(著)
殴り合い寸前までいった日米功防のすべて!日本の安全保障の行方を左右する在日米軍の再編問題。しかし政府は確たる方針をもたず迷走をつづけてきた。交渉の全貌を明かし、日本外交の構造的欠陥をえぐる!
- 本の長さ208ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2005/11/18
- ISBN-104061498185
- ISBN-13978-4061498181
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2005年12月8日に日本でレビュー済み
この本は「米軍再編をお題にした政治ゲームの事実集」である。
淡々と事実のみをひたすら列挙しており、米軍再編をめぐる日本と米国の戦略的視点の分析が全く欠けている。
私は途中で読みつづけるのが苦痛になってしまった。
淡々と事実のみをひたすら列挙しており、米軍再編をめぐる日本と米国の戦略的視点の分析が全く欠けている。
私は途中で読みつづけるのが苦痛になってしまった。
2005年11月27日に日本でレビュー済み
在日米軍再編をめぐる、日本とアメリカの交渉、自衛隊と米軍のつながり、日本国内の省庁間の対立などを通して日本の安全保障戦略の欠如やアメリカの世界戦略を描き出している。コンパクトにまとめられているので、再編交渉を手軽に振り返ることができる。
2005年12月23日に日本でレビュー済み
新聞では断片的にしか報じられなかった米軍再編に関わる日米の協議の経過を、よくぞここまで取材し、まとめたものだと感心した。
米国の要求に対し、場当たり的な対応を繰り返して楽観的に値切り交渉を繰り返す経過がよくわかった。でもこれって、日中戦争や太平洋戦争の勃発の時と同じような気がする。日本人の体質なのかもしれない。
最後に「この国には政治的な意志がない(No political will.)」と記載されているが、まさしくその実態をみせつけてくれた一冊でした。
米国の要求に対し、場当たり的な対応を繰り返して楽観的に値切り交渉を繰り返す経過がよくわかった。でもこれって、日中戦争や太平洋戦争の勃発の時と同じような気がする。日本人の体質なのかもしれない。
最後に「この国には政治的な意志がない(No political will.)」と記載されているが、まさしくその実態をみせつけてくれた一冊でした。
2005年12月11日に日本でレビュー済み
この方面のニュースに触れる度に「こんな生ぬるいやりとりをしているわけはない」とは思っていたが、「やはり思ったとおり」と納得した。本書は米軍再編問題を通して、現実との矛盾が決定的になっている日米安保条約と、それに基づく在日米軍の将来について日本政府の交渉がいかに主体性を欠き、戦略に乏しく、リーダーシップもチームワークもなかったかという事実を見事に暴いている。
再編された米軍のアジア戦略はもはや日米安保条約の規定する「極東」を超え、「中国の脅威」という問題も、もはや包み隠してはおけなくなり、長期的視野に立った安全保障の視点が必要とされる現在、条文上の辻褄合わせと在日米軍基地負担の縮小に汲々とする外務省と、日米安保条約の「歯止め」もなきが如く米軍と現場同士の連携に走る防衛庁・自衛隊の主導権争いの諸側面が明らかになっている。またブッシュとの個人的な関係を誇っている割には、何ら指導力を発揮できなかった小泉総理の、さらに政治全体のビジョンや行動力のなさも、筆者の豊富な情報網によって詳らかにされている。
そして何よりも驚くのは、このような米側の具体的な提案や日米の意見交換の実態が、その負担を引き受ける地方自治体の首長ばかりか国民にも全く知らされず、官僚が情報を独占していた事実である。本書は「報道されなかった事実」を明らかにし、外務省や防衛庁に欠けていた、我々の問題を国民的な議論を経て決定しようという態度に貢献する。しかし筆者は共同通信の記者であるなら、なぜ今まで記事にして、その都度問題提起してこなかったのかという疑問も残る。
本書は、従来まで日本の文献ではあまり整理されていなかった米軍の構成や各部隊などの戦略上の位置づけなどについても概観できるという意味で貴重である。日米安保の基礎知識を勉強したい人にとっても格好の入門書と言っていいだろう。
再編された米軍のアジア戦略はもはや日米安保条約の規定する「極東」を超え、「中国の脅威」という問題も、もはや包み隠してはおけなくなり、長期的視野に立った安全保障の視点が必要とされる現在、条文上の辻褄合わせと在日米軍基地負担の縮小に汲々とする外務省と、日米安保条約の「歯止め」もなきが如く米軍と現場同士の連携に走る防衛庁・自衛隊の主導権争いの諸側面が明らかになっている。またブッシュとの個人的な関係を誇っている割には、何ら指導力を発揮できなかった小泉総理の、さらに政治全体のビジョンや行動力のなさも、筆者の豊富な情報網によって詳らかにされている。
そして何よりも驚くのは、このような米側の具体的な提案や日米の意見交換の実態が、その負担を引き受ける地方自治体の首長ばかりか国民にも全く知らされず、官僚が情報を独占していた事実である。本書は「報道されなかった事実」を明らかにし、外務省や防衛庁に欠けていた、我々の問題を国民的な議論を経て決定しようという態度に貢献する。しかし筆者は共同通信の記者であるなら、なぜ今まで記事にして、その都度問題提起してこなかったのかという疑問も残る。
本書は、従来まで日本の文献ではあまり整理されていなかった米軍の構成や各部隊などの戦略上の位置づけなどについても概観できるという意味で貴重である。日米安保の基礎知識を勉強したい人にとっても格好の入門書と言っていいだろう。
2005年12月12日に日本でレビュー済み
安全保障を研究している者だが、現場を知り得ない我々には教材、論文資料としても有益。これまでの報道では触れられていない交渉経緯が詳細に描かれており圧巻。恐らく、この本に書かれている日米交渉の経過は数十年後の情報公開でも明らかにされないものばかりではないか。我々研究者は中身の濃い事実がなければ分析も論評も深まらない。その意味で類書が見当たらない力作と評価したい。
2005年12月10日に日本でレビュー済み
日米関係に興味があり、最近話題になっている米軍再編問題についての本ということで読んでみた。新聞やテレビが伝えない日米交渉の裏にある事実が次々に明るみにだされ、日本政府がいかにこの問題で主体性を欠き迷走したのかがよくわかる。単なる外交秘話に終わらず、筆者は日本側にもイニシアチブを握る好機があったにもかかわらず、せっかくの独自再編を提示するチャンスを逸してしまったと批判する。この交渉過程の徹底的な検証は今後の日米関係を考えるうえで新しい視座を与えてくれる。写真、図、表もあって、一読すると日米安保の歴史、在日米軍、沖縄の現場など日米安全保障関係の一通りの知識も得られるようになっている。