有名な詩人オルフェは、カフェで若き新人詩人セジュストが謎のバイク2人組にはねられるのを目撃する。そこへこれまた謎の美女と運転手ウルトビーズが現れ、セジュストを車に入れ、オルフェにも乗るように促す。すると途端に車外の空気は変わり、ラジオからはこれまた謎の詩の朗読が・・。そこへなぜかセジュストをはねたバイクの2人も合流し、朽ち果てた女の屋敷へ・・。そこは此岸と彼岸の端境であった・・。
ここからここが幻想と言い難い、詩の朗読のような映画でした。私は日常的に詩を読む人間ではないですが、みなさん言うように映像による詩。というと抽象的すぎるのですが、詩(散文詩)のような文体の、リズムの映画という印象です。物語をいちおう把握しようとしましたが、途中で止してしまいました。
オルフェ(オルフェウス、オルペウス)の出典はギリシャ神話の吟遊詩人。神話ではオルフェの妻が毒蛇に噛まれ帰らぬ人に。妻をよみがえらせるために冥府に赴き・・というアウトラインです。冥界の王ハデスは妻をオルフェに引き渡し「決して後ろを振り返ってはならぬぞよ」と言いますが、オルフェはつい・・。本作はオルフェの冥府くだりをコクトーが現代(40年代)に置きかえたお話しのようです。
謎の美女は死神で、運転手はその従者なんです。セジュストもしもべになってます。あらゆる鏡からあの世とこの世を行き来します。そして鏡とともにラジオも生者と死者の通信手段として表現されます。あの世から放送されるアナウンスが詩人オルフェの創作インスピレーションになります。これは詩人に代表される芸術家の創作の過程が見せたまぼろし譚でもあるかと。これはコクトー自身の焦燥かも知れず、普遍的なテーゼともいえます。
そしてなにより本作はオルフェと妻や死神、従者と詩人の妻や死神などの愛の物語でもあります。異世界の者への愛というのは昔から神話や伝承、昔話で扱われてきたテーマ?黄泉がえりですね。いのち亡き者の生者への恋慕の情、神話と異なるラストはあの世の住人の悲哀を感じさせてやるせないです。異類婚姻譚の変形ともいえるかもしれません(ここでは婚姻ではないですが)。
死を運ぶバイク(冥界の番犬ケルベロス?)のイメージや、それ以上に鏡、黄泉の国へのトンネルらしき廃墟の描写が素晴らしい。物語を追おうとすれば難解に思えますが、様々な映像トリック(逆廻し等)だけでなく、全編を覆う被現実感(舞台は1940年代のパリ近郊と思うのですが)に捉えられます。こちらの平衡感覚までぐらつくのです。映像「詩」ですから、感じるままに流れて行けば・・なんて思います。そして役者(特にウルトビーズのフランソワ・ペリエ)、撮影のニコラ・エイエが良い。
私はコクトーや神話の背景をよく知らずに観ましたが、その独特の不思議なテンションにもっていかれました。映画以外のコクトーの素養が影響したのでしょうか。コクトーの映画情熱が感じられ、誰にも似ていないですね。技術のレベルの話なんか通り越しためくるめくそして昏い感性の表出は古びてないです。監督の美意識や実験精神あふれ、難解さをおそれない建て付け(米のウェルズ、仏のコクトー・・か?)。
また観れば新たな気づきができる作品と思います。どこまでも仏映画でありながらなぜかフランスが舞台に見えないという・・。下記に記したコクトーの『詩人の血』『オルフェの遺言』もどこかで観たいですね。下記のように、画質状態の良い国内版は出ていない(『美女と野獣』も同様)。美麗な画質で観たかったです。またしても国内メーカーの見識と経済感覚を疑う。作品★5つ、商品★3つで総合4つ。
Orphée (英題Orpheus)1950, FR, Andre Paulve Film ・DisCina
Theatrical aspect ratio 1.37: 1, Mono, 95 min(製作国仏では112min.)B&W
画質はDVDとしても下。ゴミ、傷、ちらつきが散見。粗く甘い。しかも一番よくないのはフレームのガタツキがひどくはないがあること。人によりストレスを感じる。これをふまえての星4つです。95分(手を不本意に入れられたものかInternational版かは不明)
片面1層、4:3(スタンダード)、 Dolby Digital, 音声:仏語。字幕:日本語のみ。字幕ON・OFF不可。チャプターメニューあり。
コクトー、マレー、カザルスの簡単な文字解説あり。発売元IVC
映像特典:なし
関連キーワード:詩人、死神、冥府、バイク、ラジオ、車、鏡、逆廻し、ギリシャ神話、オルペウス、黄泉がえり、判事、廃墟、手袋
関連作:
黒いオルフェ(Orfeu Negro (1959))。同じ神話をもとにしていますが、同じ土俵ではないと思います。本作のリメイクではありません。
詩人の血(Le Sang D'un Poete(英題The Blood of a Poet) 1930コクトー監督)。
本作はこの時表現しきれなかったことを追求したものだという。本作より実験色が強い作風らしい。直接には前日譚ではないもよう。
オルフェの遺言(Le testament d'Orphée(英題Testament of Orpheus)1960コクトー監督)。続編的内容のようです。
画質・音質・特典・デザインで定評のある、クライテリオンから美麗な北米版BD, DVDが出ている。そして『詩人の血』『オルフェの遺言』を合わせた3枚組DVDBOX( Orphic Trilogy (The Criterion Collection))も(どちらもこのアマゾン・ジャパンの検索ではヒットしない)。
オルフェ [DVD]
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フォーマット | ブラック&ホワイト, 字幕付き |
コントリビュータ | ジャン・マレー, ジャン・コクトー, マリア・カザレ |
稼働時間 | 1 時間 52 分 |
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商品の説明
詩人オルフェは、「詩人カフェ」に集る文学 青年達の賞賛の的であった。或日このカフェに王女と呼ばれる女性が来る。 同行者の詩人セジェストがオートバイにはねられて死んだので、オルフェ に手伝わせて彼女は自分のロールス・ロイスに死体をのせた。車が着いた建物で、 王女はセジェストを生返らせて鏡の中に消えた。オルフェは鏡にぶつかって気 を失い、目が覚めると建物はなくなっていた。車の運転手ウルトビイズをゆり起 してオルフェは妻のユウリディスの待つ我家へ帰ったが、彼の心は王女に飛んで、 車のラジオから聞こえる暗号に耳を傾けるのに必死だった。王女は毎晩オ ルフェの夢枕に現れたが、彼はそれに気付かなかった。ユウリディスは夫 の心が自分から離れたと悲観していたが、或日オートバイにはねられて死んだ。 ウルトビイズからこれを聞いたオルフェは、手袋のおかげで鏡を通り抜け、 死の国へ出かけた。そこでは裁判が開かれ、オルフェは二度と妻を見てはならぬという条件で、 ユウリディスを連れ帰ることを許されたのだが…
登録情報
- メーカーにより製造中止になりました : いいえ
- 梱包サイズ : 18.03 x 13.76 x 1.48 cm; 83.16 g
- EAN : 4571339482486
- 監督 : ジャン・コクトー
- メディア形式 : ブラック&ホワイト, 字幕付き
- 時間 : 1 時間 52 分
- 発売日 : 2011/2/15
- 出演 : ジャン・マレー, マリア・カザレ
- 販売元 : ファーストトレーディング
- ASIN : B004NXMENG
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 85,113位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- - 7,960位外国のドラマ映画
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年6月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ジャン・コクトーが映画も撮る人だとは知らなかったです。しかも色々趣向を凝らした撮り方に感心しながら観ました。思いがけない拾い物のような大変気に入った映画です。
2021年7月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
久々に見たくなって amazon prime にて観賞。
殆ど内容を忘れていたが、ツンデレ女に振り回される話だったとはチョット意外だった。
はまり役だったマリア・カザレスの完璧な存在感が、なんといっても見所だが、とにかくフランソワ・ペリエ(わかっ!)が素晴らしい。
この二人がいなければ成立しなかったに違いない。
コクトーのアイデアを見事にフィルムに定着させたニコラ・エイエの撮影も本当に素晴らしい。
しかし脚本の方は、もうちょい練った方が良かった気もする。
新進気鋭の詩人であるはずのセジェストが殆どマダム(死神)の操り人形というのは物足りない。
元々は「Nudisme」という意外性の塊のような作品を出すくらいなのだから、彼を起点に、もっと意外な展開にした方が伏線も回収できて面白かったはずだ。
ジュリエット・グレコ(これまた若っ!)も出来れば本人役で出演させて、当時、恋仲だったマイルスと共演させて、1曲歌わせても面白かったかも。
そして、そのグレコといえば、実存主義のミューズだったのだから、ギリシャ神話の主意主義なコンテクストと実存主義をリンクさせても面白かったかも。
あと、英語版をマスターにしているが、英語の字幕と日本語の字幕で辻褄が合わないところがあり、フランス語が分からぬゆえ類推するしかなかったりする。
そして、とにかく画質が悪い。80年代にリリースされた日本版の方が、もっと画質は良かった記憶がある。
よって⭐︎は減点して三つ。
数年前に劇場用にHDリマスターされているんで、本当はそっちの配信がベストだが、まずはDVD化されないと難しいのかな?
ともかく、まずは、日本版の方で改めて配信し直して欲しい。
殆ど内容を忘れていたが、ツンデレ女に振り回される話だったとはチョット意外だった。
はまり役だったマリア・カザレスの完璧な存在感が、なんといっても見所だが、とにかくフランソワ・ペリエ(わかっ!)が素晴らしい。
この二人がいなければ成立しなかったに違いない。
コクトーのアイデアを見事にフィルムに定着させたニコラ・エイエの撮影も本当に素晴らしい。
しかし脚本の方は、もうちょい練った方が良かった気もする。
新進気鋭の詩人であるはずのセジェストが殆どマダム(死神)の操り人形というのは物足りない。
元々は「Nudisme」という意外性の塊のような作品を出すくらいなのだから、彼を起点に、もっと意外な展開にした方が伏線も回収できて面白かったはずだ。
ジュリエット・グレコ(これまた若っ!)も出来れば本人役で出演させて、当時、恋仲だったマイルスと共演させて、1曲歌わせても面白かったかも。
そして、そのグレコといえば、実存主義のミューズだったのだから、ギリシャ神話の主意主義なコンテクストと実存主義をリンクさせても面白かったかも。
あと、英語版をマスターにしているが、英語の字幕と日本語の字幕で辻褄が合わないところがあり、フランス語が分からぬゆえ類推するしかなかったりする。
そして、とにかく画質が悪い。80年代にリリースされた日本版の方が、もっと画質は良かった記憶がある。
よって⭐︎は減点して三つ。
数年前に劇場用にHDリマスターされているんで、本当はそっちの配信がベストだが、まずはDVD化されないと難しいのかな?
ともかく、まずは、日本版の方で改めて配信し直して欲しい。
2018年7月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ゴマブックスのDVD-R版を購入しました。
英語の焼き付き字幕が下に横に出て、
日本語訳の字幕が画面の右に縦に出て、
2種類の字幕が逆L字型にある状態です。
そのため画面の右がとても見にくい。
日本語訳も他の社のDVDと違って明らかに間違っているところがある。
あまりおすすめしません。
追記
オルフェの日本のDVDで一番いい(見やすい)と思ったのは、
フランス映画 パーフェクトコレクション 天井桟敷の人々 DVD10枚組 ACC-127
フランス映画 パーフェクトコレクション 天井桟敷の人々 DVD10枚組 ACC-127
この中のオルフェです。
英語の焼き付き字幕が下に横に出て、
日本語訳の字幕が画面の右に縦に出て、
2種類の字幕が逆L字型にある状態です。
そのため画面の右がとても見にくい。
日本語訳も他の社のDVDと違って明らかに間違っているところがある。
あまりおすすめしません。
追記
オルフェの日本のDVDで一番いい(見やすい)と思ったのは、
フランス映画 パーフェクトコレクション 天井桟敷の人々 DVD10枚組 ACC-127
フランス映画 パーフェクトコレクション 天井桟敷の人々 DVD10枚組 ACC-127
この中のオルフェです。
2007年9月26日に日本でレビュー済み
上映時間112分とレーベルにも記載されているので115分のオリジナル版に近いものが見られると期待しましたが、実際の上映時間は90分強しかなく、クライテリオンやIVCなどから出されている95分版より短いものでした。このような基本的データの記載ミスは、商品として許されるのでしょうか。
また、画質は思ったほど悪くない(と言ってもクライテリオン版とは比較になりません)のですが、他の字幕を消した上に日本語字幕を入れているので、部分的にボケています。
また、画質は思ったほど悪くない(と言ってもクライテリオン版とは比較になりません)のですが、他の字幕を消した上に日本語字幕を入れているので、部分的にボケています。
2014年6月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この映画は、当然古代ギリシア神話の題材をジャン・コクトー監督が自由に読み替えた作品である。なかでも主役のオルフェ役のジャン・マレーが鏡を通して妻のいる死者の国へ行き来する情景は秀逸である。しかもその際に、彼は手袋をはめなければならない。
この映画を理解する鍵は、光学機器の鏡である。それは、誰もが心の中にもっている歪んだ鏡あるいは反面鏡だからである。まさにあるロシアの亡きピアニストがいみじくも指摘した通り「悪魔の光学機器」である。人は誰もがこのような鏡自体にとなって事実/真実を映したいと思うものである。しかし、現実はそう生易しいものではない。人の心には「歪んだ鏡」しかないのである。
死者の国の王女役をマリア・カザレスが演じ、その親近感の欠片を見せない無表情な美貌は、まさに当り役である。
この映画を理解する鍵は、光学機器の鏡である。それは、誰もが心の中にもっている歪んだ鏡あるいは反面鏡だからである。まさにあるロシアの亡きピアニストがいみじくも指摘した通り「悪魔の光学機器」である。人は誰もがこのような鏡自体にとなって事実/真実を映したいと思うものである。しかし、現実はそう生易しいものではない。人の心には「歪んだ鏡」しかないのである。
死者の国の王女役をマリア・カザレスが演じ、その親近感の欠片を見せない無表情な美貌は、まさに当り役である。
2013年11月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
仕事上、こういう名画DVDが必要なのですが、格安で入手できました。
2021年1月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ヨハンヨハンソン(1969年9月19日 - 2018年2月9日)という作曲家が、この作品にインスパイアされ書いたアルバム『オルフェ』の中の、『フライト・フロム・ザ・シティ』という曲が非常に好きで、何回もリピートしている。
そんな曲の題材になった映画を見なくては、と思い
時だけが過ぎていった、
ある時検索すると1950年代の映画だと知り、レビューを見て
事前情報皆無の僕が見てもわからないけど、まぁ見てみるかと、見て見た。
予想どうり、実にわからないwww(後で時間のある時に考察したい、)
ヨハンヨハンソンは、なぜあの様な綺麗な曲をかけたのだろうか。
ヨハンヨハンソンの曲ありきで見ていたので、綺麗な内容なのかと思っていたが,,www
レビューを見る限り、いい映画らしいし、
僕の尊敬するヨハンヨハンソンヨハンヨハンソンもインスパイアインスパイアされたらしいので、
一度考察して見たい。
しかしアマゾンプライムといい、サブスクは、非常にいいですね、
時代の垣根を超えて、
若者がこうして勉強できるのはありがたい。
もし、サブスクがなければ、ビデオ屋さんにも図書館にも足を運ばなかっただろう。
それに、こうしたレビューで人生の先輩に、時代背景/作品概要/思い出/おすすめ/
を教えていただくこともまた、非常にありがたい。
そんな曲の題材になった映画を見なくては、と思い
時だけが過ぎていった、
ある時検索すると1950年代の映画だと知り、レビューを見て
事前情報皆無の僕が見てもわからないけど、まぁ見てみるかと、見て見た。
予想どうり、実にわからないwww(後で時間のある時に考察したい、)
ヨハンヨハンソンは、なぜあの様な綺麗な曲をかけたのだろうか。
ヨハンヨハンソンの曲ありきで見ていたので、綺麗な内容なのかと思っていたが,,www
レビューを見る限り、いい映画らしいし、
僕の尊敬するヨハンヨハンソンヨハンヨハンソンもインスパイアインスパイアされたらしいので、
一度考察して見たい。
しかしアマゾンプライムといい、サブスクは、非常にいいですね、
時代の垣根を超えて、
若者がこうして勉強できるのはありがたい。
もし、サブスクがなければ、ビデオ屋さんにも図書館にも足を運ばなかっただろう。
それに、こうしたレビューで人生の先輩に、時代背景/作品概要/思い出/おすすめ/
を教えていただくこともまた、非常にありがたい。