大帝国の繁栄と衰退を学ぼうと、その一環で本書を読みました。
しかし、香港情勢の変革を目の当たりにするにあたり、意外とタイムリーな本に出会ったなと思っています。
アヘン戦争は香港が英領となった直接的な原因だけに、今の香港情勢を考えたい人も物事の経緯の大前提として読むのも良い気がしました。
全体の中身としては、6割半くらいがアヘン戦争が起きる前の貿易の状態や戦争に至る経緯で、残り約3割半が戦闘と戦後の条約交渉の経過という感じです。
70年代に書かれた本ですが、意外と地政学的に書かれていると感じる部分もあって、今読んでもすんなり入ってくる珍しい本だと思います。
例えば、テレビなどの優しい解説、教科書の説明などでは中々見ない経緯がけっこう書かれています。
よく見る記述は、
・清、英の正規取引は銀建決済であった
・英側の過剰な貿易赤字により、英側に銀不足が生じた
この辺まで、本書はさらに踏み込んで、
・銀回収のためにアヘンを銀建で密輸
・清の一般市民は普段は銅銭を使うが、納税は銀建
・アヘンによる銀流出により、清国内の銅銭ー銀交換レートは銀高へ
・銀高で相対的な増税になり、清朝政府は市民反乱を恐れて対策
・アヘン禁止令、アヘン接収と焼却処分へ
と、経済や政治的な面からの説明があるのです。
他にも
・林則徐の欽差大臣就任の経緯から取り締まり活動
・ベンガルでのアヘンの輸出量、アヘンの出荷形態
・アヘン禁止令が出されるまでの奏上の内容や、臣下の政治的な意見の違い
・アヘンの焼却の具体的なやりかた(別な本で知りましたが今の東莞のあたりでやったらしいです。)
・英国船の数やその砲門数、戦線の遷移
など多岐に渡った詳細な記述がみられ、70年代の執筆とは裏腹に最近の歴史本にみられる地政学、地経学的なアプローチも感じられるのが最大の特徴かと思います。
ちなみに、英語版のWikipediaのアヘン戦争の記事には絵画が何点もあったのでビジュアル資料として目を通すとさらにイメージが湧きやすいと思いました。
(文もたくさんありましたが、難しくて読んでません)
凄腕の小説家先生だけあって、全体的に読みやすいだけでなく林則徐の人物描写も自然に入ってくる感じで満足度高かったです。
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実録アヘン戦争 (中公文庫 M 265) 文庫 – 1985/3/10
陳 舜臣
(著)
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東アジアの全近代史に激甚な衝撃を及ぼした戦争と人間。その全像を巨細に活写し、読む面白さ溢れる名歴史書に「それからの林則徐」を付した決定版。
- 本の長さ292ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日1985/3/10
- ISBN-104122012074
- ISBN-13978-4122012073
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- 出版社 : 中央公論新社 (1985/3/10)
- 発売日 : 1985/3/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 292ページ
- ISBN-10 : 4122012074
- ISBN-13 : 978-4122012073
- Amazon 売れ筋ランキング: - 199,789位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1924(大正13)年、神戸に生まれる。大阪外語大学印度語部卒業。同校西南亜細亜語研究所助手を勤めるが終戦によって辞職し、家業の貿易に従事。 1961年、『枯草の根』により江戸川乱歩賞を受賞し作家生活に入る。69年、『青玉獅子香炉』により直木賞、70年、『玉嶺よふたたび』『孔雀の道』に より日本推理作家協会賞、71年、『実録アヘン戦争』により毎日出版文化賞、76年、『敦煌の旅』により大佛次郎賞、89年、『茶事遍路』により読売文学 賞(随筆・紀行賞)、92年、『諸葛孔明』により吉川英治文学賞、93年、朝日賞、さらに95年、「作家としての業績」により日本芸術院賞をそれぞれ受賞 する。日本芸術院会員(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『秘本三国志(六) 』(ISBN-10:4122052157)が刊行された当時に掲載されていたものです)
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2015年6月21日に日本でレビュー済み
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小説を読んでいるような実録で興味深く読めました。著者の教養が伝わる濃く深い内容で読みがいがありますが、時間がない時にでもさらりとは読める感じではなく、頭を使うことを覚悟で読み進めるとよい一冊です。
2014年4月27日に日本でレビュー済み
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陳舜臣氏の著作にしては、引用が多く、読みづらい。 「実録」というので、史実にそってという気持ちが強かったのであろうか、小説家としての、陳舜臣氏の作品としては、登場人物が目の前に現れてこないもどかしさがある。 引用が多く、興にのってきたなと思うと、すぐ、ペースを落とされてしまう感じがする。
歴史書としては、考証に今一つ食い込みが欲しい、小説としては、登場人物がもう少しビビッドであってほしい、というのは読者の勝手な注文だとはわかっているのですが。
歴史書としては、考証に今一つ食い込みが欲しい、小説としては、登場人物がもう少しビビッドであってほしい、というのは読者の勝手な注文だとはわかっているのですが。
2021年9月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
教科書からアヘン戦争に興味を持ち、この本を購入した。
教科書では1ページに納められる程度の戦争であったが、読めば読むほど重大な戦争であることがわかった。
値段も手頃でささっと読めるため、暇つぶし程度に知識に入れてみてはどうだろうか。
教科書では1ページに納められる程度の戦争であったが、読めば読むほど重大な戦争であることがわかった。
値段も手頃でささっと読めるため、暇つぶし程度に知識に入れてみてはどうだろうか。
2013年8月15日に日本でレビュー済み
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参考にしたい個所が見つからず残念でした。ただ、美本なので喜んでいます。
2020年12月31日に日本でレビュー済み
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アヘン戦争がどのようにして始まり、どのような結末で幕を引いたのか、良くわかりました。
良い本でしたので人に勧め差し上げました。
良い本でしたので人に勧め差し上げました。
2011年6月30日に日本でレビュー済み
毛沢東は「核戦争になっても中国人はたくさん居るから生き残れる」という趣旨の発言をしたらしい。今日世界一の超大国になろうとしている中国の究極の統治術は「統治しない」ことである。下々の国民のことなど知ったことではない。税金さえ集まればそれでいい、という訳だ。
本書の道光帝はじめ北京政権にも同じことが言える。イギリスが大国清にこれほどあっさりと勝てた原因は彼らの中華思想にあることは疑いない。その中で林則徐の孤軍奮闘が際立って描かれている。
また戦争は経済とは切っても切り離せない関係だがアヘン戦争は純粋に商人の利益追求から生まれた戦争である。この戦争の本質を理解していた点でも林則徐は偉大である。
本書の道光帝はじめ北京政権にも同じことが言える。イギリスが大国清にこれほどあっさりと勝てた原因は彼らの中華思想にあることは疑いない。その中で林則徐の孤軍奮闘が際立って描かれている。
また戦争は経済とは切っても切り離せない関係だがアヘン戦争は純粋に商人の利益追求から生まれた戦争である。この戦争の本質を理解していた点でも林則徐は偉大である。
2019年8月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
幕末の日本を揺るがせ、開国に向かわせたのがペリーが率いてきた黒船の艦隊だったのに間違いないけれど、待ち構えていた幕府にはアヘン戦争の顛末に関する情報が届いていた。アヘン戦争と同じことが日本に起きてはならないと勝海舟たちは考えたにちがいない。彼らのアヘン戦争理解のありかたが明治以降の富国強兵政策の原動力になって結局は太平洋戦争に繫がっていったのではないか。だから、軍艦外交の成功例としてアヘン戦争を見るのが正しいのかどうか、再点検するのが大切だと思う。そんな作業の手始めに読む本としてこの本は最適だ。