著者が後記で 大方の日本人がムッソリーニについての知識に乏しいことを述べているが 僕自身が まさしく その一人である。今回本書を読んだことで 今までのムッソリーニとファシズムへの理解が誤解に近かったことが分かり大変勉強になった。
本書で描かれるムッソリーニは 全体主義の暴君ではない。
独裁者であった点は間違いないが その志においては 非常に高い方であったとも言える。第二次大戦の後の将来像に関しても インド・アラブ諸国等の独立を「新秩序」と考える等 植民地獲得合戦に明け暮れていた欧州の中ではむしろ先進的な発想があったという。盟友であったヒトラーが アーリア民族の優越という 荒唐無稽の物語を妄想していたのに比較しても 大きな差があったと言えよう。
今なお ムッソリーニはイタリアにとっては複雑な存在であると著者は言う。それはユリウス・カエサルに対してイタリア人が持つ複雑な心境にも似ているという。
時代の精神が一人の個人に凝縮される場面は世界史においても散見されてきているがムッソリーニも そんな一人なのかもしれない。勿論 歴史的評価には まだ早いとは思うのだが 同じく第二次世界大戦に参加し、敗北した日本人として ムッソリーニに関する知識がよりあるべきだという著者の志には賛成する次第だ。

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
ムッソリーニ: 一イタリア人の物語 (中公叢書) 単行本 – 2000/12/1
ロマノ ヴルピッタ
(著),
Romano Vulpitta
(原名)
- 本の長さ340ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2000/12/1
- ISBN-10412003089X
- ISBN-13978-4120030895
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
社会主義からニーチェまでも渉猟した優れた知識人である一方、永遠の恋人クラレッタと出会うまで多彩な女性遍歴をもつ…。イタリア・ファショ指導者の既成像を一新する評伝。
登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2000/12/1)
- 発売日 : 2000/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 340ページ
- ISBN-10 : 412003089X
- ISBN-13 : 978-4120030895
- Amazon 売れ筋ランキング: - 190,513位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 473位ヨーロッパ史一般の本
- - 33,002位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中5つ
5つのうち5つ
5グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2021年8月3日に日本でレビュー済み
10代中頃よりナチスドイツや、その関連に目がなく、数多の書籍に目を通した私でも、ムッソリーニのイメージが(良い方に)改まる一冊でした。
偏見を抜きに、1人の人間として、ドゥーチェを記しています。
偏見を抜きに、1人の人間として、ドゥーチェを記しています。
2009年7月4日に日本でレビュー済み
イタリアの英雄でありファシストであるムッソリーニ伝である本書が言いたいのは、ムッソリーニの偉大さとともにイタリアの歴史の苦難ではないかと思います。
イタリアといえば、ローマ、ヴァチカンの偉大なる歴史、美術、そして、ローマの休日にみられる恋の物語。
しかし、本書を読むと、イタリアの苦難の政治史が見て取ることができます。
その苦難の政治史において、イタリアを統合し、ドゥーチェと呼ばれたムッソリーニ。
そして、晒された悲劇の死。
本書は、ムッソリーニの生い立ちから、思想形成、女性遍歴まで詳細に、かつ、読みやすい文体で書かれています。
私も、ムッソリーニというとヒトラーという豪華料理の前菜くらいしかとらえていなかったのですが、この本を読んでムッソリーニの偉大さ、緻密さを知りました。
彼が二流と見なされた理由は、やはり、彼の楽天的優柔不断さにあるのではないかと。
そのあたり、ヒトラーは即決即断。
マキャベリスト。
マキャベリはイタリアが生んだ知略ですが、その手段をおこなわなかったムッソリーニこそ真のイタリア人なのかもしれまん。
是非、ご一読を。
イタリアといえば、ローマ、ヴァチカンの偉大なる歴史、美術、そして、ローマの休日にみられる恋の物語。
しかし、本書を読むと、イタリアの苦難の政治史が見て取ることができます。
その苦難の政治史において、イタリアを統合し、ドゥーチェと呼ばれたムッソリーニ。
そして、晒された悲劇の死。
本書は、ムッソリーニの生い立ちから、思想形成、女性遍歴まで詳細に、かつ、読みやすい文体で書かれています。
私も、ムッソリーニというとヒトラーという豪華料理の前菜くらいしかとらえていなかったのですが、この本を読んでムッソリーニの偉大さ、緻密さを知りました。
彼が二流と見なされた理由は、やはり、彼の楽天的優柔不断さにあるのではないかと。
そのあたり、ヒトラーは即決即断。
マキャベリスト。
マキャベリはイタリアが生んだ知略ですが、その手段をおこなわなかったムッソリーニこそ真のイタリア人なのかもしれまん。
是非、ご一読を。
2003年4月9日に日本でレビュー済み
ムッソリーニは第二次大戦時のイタリアの戦争指導者なのだが、我が国ではドイツのヒトラーと比してあまりにも知名度が低い。
戦争が弱かったことがその理由だろう。かろうじてファシストとして語られるだけである。
ところが、イタリアでは今なお絶大な人気があるそうだ。その評価は日本で知られる矮小化したファシストと言う扱いではなく、近代ヨーロッパにそそり立つ大思想家・大政治家としてである。その波乱万丈の人生は、情熱的なイタリア人そのものである。彼は正しくイタリアを体現した国民政治家であったのだ。
イタリアといえば、サッカーやイタリア料理を思い浮かべることでしょう。しかし、ムッソリーニを知らずしてイタリアを知ったということは一知半解も甚だしい。この本を読めばそれが!解る。
戦争が弱かったことがその理由だろう。かろうじてファシストとして語られるだけである。
ところが、イタリアでは今なお絶大な人気があるそうだ。その評価は日本で知られる矮小化したファシストと言う扱いではなく、近代ヨーロッパにそそり立つ大思想家・大政治家としてである。その波乱万丈の人生は、情熱的なイタリア人そのものである。彼は正しくイタリアを体現した国民政治家であったのだ。
イタリアといえば、サッカーやイタリア料理を思い浮かべることでしょう。しかし、ムッソリーニを知らずしてイタリアを知ったということは一知半解も甚だしい。この本を読めばそれが!解る。