ピンチョンという作家の作品はソラリスの海のようなものである。
才能が余りにも巨大すぎてその輪郭さえつかめないので、凡人は「何かすごいものを読んでしまった」
という朦朧たる印象以外何も与えられないまま宙吊りにされ、取り残される。
「とてつもなく巨大な何かが世界規模で蠢いている」ということだけはわかる。
しかしそれが全体として何なのかほとんど全くわからない。
だから誰もピンチョンの足元にも寄れない。近づくことさえできないのである。
もとよりこの小説について私のようなアホが何か言及することなどできるわけがないのだが
敢えて言うと、なにか一種のシンクロニシティ的でサイキックなアンダーグラウンドネットワーク
のようなものがあり(不気味としか言いようのない地底生物さえ登場する。
私見では古今の小説の中に出てきた最も不気味な存在である)、世界中に拡がるその結節点で
わけのわからない迂遠な仕方で様々な関連事象らしきことが生起する小説である。
不可知論的で(つまり全体として何か起こっているのかわからない)
量子力学的な非局所的グローバル情報ネットワークを
なにか不気味な怪物として描いた小説としか言えないのだ。
しかもこの作品「V」は文句なしにピンチョンの最高傑作なのだ。
なんと執筆当時26歳である。何でこんな人間がいるのだ。

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V. 1 新装版 単行本 – 1989/7/1
- 本の長さ377ページ
- 言語日本語
- 出版社国書刊行会
- 発売日1989/7/1
- ISBN-104336024464
- ISBN-13978-4336024466
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登録情報
- 出版社 : 国書刊行会 (1989/7/1)
- 発売日 : 1989/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 377ページ
- ISBN-10 : 4336024464
- ISBN-13 : 978-4336024466
- Amazon 売れ筋ランキング: - 295,754位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 49,977位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年6月5日に日本でレビュー済み
2012年8月22日に日本でレビュー済み
手元にあるのは、この国書刊行会の新装版なのですが、最初に読んだのは高校生のころ「ゴシック叢書」の一冊として刊行されたものだったので、それを含めるとおそらく今回で四回目の読み返しだと思います。毎回新たな発見があって、などと見栄を張って言うのが癪なほど、毎回「読めてる感」が希薄なので、自分なりにすこしでも楽しめるように、ピンチョンを読み返すときには、「必ず新しい趣向を講じて読む」と決めています。
今回は、新潮の「コンプリート・ワークス」刊行のおかげで参考文献がいままでにないほど手元にあるので、そういったものをうまく活用できるよう、まず本文全ページをA4でコピーして、知っていることや参考文献によって気付いたこと、その他雑多な様々なことをすべて色分けして書き込んでみました。そして、上巻を読み終わったところで、ベニーを軸にした物語とステンシルを軸にした物語を分割して綴じて、それぞれを一つの時間軸に沿って読んでみたのですが、そうすると、意外にわかりやすいストーリーなんですね。それがここまで謎解きのような様相を呈してしまっているのは、もちろんその二つの時間軸を綯い交ぜにしてしまっているためなのですが、それに加えて地滑りのようにたびたび差し挟まれる各エピソードのためであることに、今回改めて気付かされたように思います。また、お得意の二項対立であったり、当時流行であったサイバネティクス(もちろん、本書で初めて知りました)を取り入れてあったり、くだらないギャグであったりで細部がしっかり固められていることも見逃すことのできない魅力ではあります。しかし、こうして分解して逆に考えてしまったのは、それでもやはり元の構成のまま、何度も読み返しながらすこしずつでも自分なりに咀嚼して楽しむのが正しい楽しみ方ではないかということでした。というわけで、こういった読み方で全体を通して一体自分になにが見えてきたのかは、下巻読了後にレヴューさせていただこうと思います(そんな大そうなこともないと思いますが)。最後にひとつ僭越なことを書かせていただくと、原文を読んでないので訳文に限ったことかもしれませんが、ピンチョンという作家は必ずしも豊潤な文章を書く作家ではない(内容やスタイルが文体に帰結するということもあるとは思いますが)ということも、今回久しぶりに本書を読みながらずっと頭を離れなかったのですが、この点については、原文を読める方に意見を伺ってみたいものです。
今回は、新潮の「コンプリート・ワークス」刊行のおかげで参考文献がいままでにないほど手元にあるので、そういったものをうまく活用できるよう、まず本文全ページをA4でコピーして、知っていることや参考文献によって気付いたこと、その他雑多な様々なことをすべて色分けして書き込んでみました。そして、上巻を読み終わったところで、ベニーを軸にした物語とステンシルを軸にした物語を分割して綴じて、それぞれを一つの時間軸に沿って読んでみたのですが、そうすると、意外にわかりやすいストーリーなんですね。それがここまで謎解きのような様相を呈してしまっているのは、もちろんその二つの時間軸を綯い交ぜにしてしまっているためなのですが、それに加えて地滑りのようにたびたび差し挟まれる各エピソードのためであることに、今回改めて気付かされたように思います。また、お得意の二項対立であったり、当時流行であったサイバネティクス(もちろん、本書で初めて知りました)を取り入れてあったり、くだらないギャグであったりで細部がしっかり固められていることも見逃すことのできない魅力ではあります。しかし、こうして分解して逆に考えてしまったのは、それでもやはり元の構成のまま、何度も読み返しながらすこしずつでも自分なりに咀嚼して楽しむのが正しい楽しみ方ではないかということでした。というわけで、こういった読み方で全体を通して一体自分になにが見えてきたのかは、下巻読了後にレヴューさせていただこうと思います(そんな大そうなこともないと思いますが)。最後にひとつ僭越なことを書かせていただくと、原文を読んでないので訳文に限ったことかもしれませんが、ピンチョンという作家は必ずしも豊潤な文章を書く作家ではない(内容やスタイルが文体に帰結するということもあるとは思いますが)ということも、今回久しぶりに本書を読みながらずっと頭を離れなかったのですが、この点については、原文を読める方に意見を伺ってみたいものです。
2014年2月22日に日本でレビュー済み
話自体は悪ふざけと言葉遊びで、多分、超現代語訳ができる人がいればもっと笑えるんだろうなあ、と思います。主人公が入れ替わり、場面も移り変わりながら、その場になじめない主人公が自分の未来や「V.」のなぞを追っていく話です。その中で、マルキシズムやカソリック、マキャベリズムが完膚無きまで悪ふざけの相手をさせられています。その時代に、一生懸命だった人が読んだら、相当頭にくるんだろうなあ。ワニの話ではないけれど、文字通り「アンダーグラウンド」の魅力満載です。
2003年4月28日に日本でレビュー済み
この本を読んでる間、何度か「私はこの本の内容を本当に理解しているんだろうか」と不安になった。
度重なる記憶の錯綜。イメージの多重写し。
読むのに時間がかかるので(多分普通の人は、ですけど)、現実の自分の人生ともイメージが度々重なってきてますますわかりにくくなる。
それでも最後まで読むと、おおこうつながるのか!と感動。
複雑なジグソーパズルが、最後に来ていっぺんに組み合わさるような神がかり的な結末が用意されていた。
とかいいながらどうつながったんだか詳しくは思い出せない。
本当に私は理解してたんだろうか?
他とはなにか明らかに違うものをもたらしてくれる本だと思う。
M.エンデの「果てしない物語」が、現実に存在するとしたらこんな本だろう、きっと。
度重なる記憶の錯綜。イメージの多重写し。
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とかいいながらどうつながったんだか詳しくは思い出せない。
本当に私は理解してたんだろうか?
他とはなにか明らかに違うものをもたらしてくれる本だと思う。
M.エンデの「果てしない物語」が、現実に存在するとしたらこんな本だろう、きっと。