和辻は昭和10年代あたりから思想的に右旋回したとみられていて(そういう評価が正しいかは一つの問題です)、一般的にいわゆる進歩的な学者からは否定的な評価をされています。しかし、この作品は別で、加藤周一や丸山真男といったいわゆる進歩的な学者も高く評価しています。
その理由は、鋭い感性で扱われたテーマを分析する理論的透徹性と西欧哲学の道具概念で日本文化を分析するその手並みのよさにあると思います。
その意味で、私は、道元について書かれた文章に最も感銘を受けました。
多くの人に読んでもらいたい名著です、

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日本精神史研究 (岩波文庫 青 144-7) 文庫 – 1992/11/16
和辻 哲郎
(著)
日本の諸種の「文化産物」を通してそこに表現されている「それぞれの時代の日本人の『生』を把握」しようと試みる.この観点から十七条憲法や大宝令,推古・白鳳天平の仏像,『万葉集』『源氏物語』といった古典あるいは道元の著作と生涯などを論ずるが,鋭い感受性に裏うちされたその分析の冴えは我々を圧倒する. (解説 加藤周一)
- 本の長さ401ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1992/11/16
- ISBN-104003314476
- ISBN-13978-4003314470
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店; 第16版 (1992/11/16)
- 発売日 : 1992/11/16
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 401ページ
- ISBN-10 : 4003314476
- ISBN-13 : 978-4003314470
- Amazon 売れ筋ランキング: - 171,476位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 106位日本思想史
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上位レビュー、対象国: 日本
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2018年7月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
収録作品を列挙すると、
1.飛鳥寧楽時代の政治的理想
2.推古時代における仏教受容の仕方について
3.仏像の相好についての一考察
4.推古天平美術の様式
5.白鳳天平の彫刻と『万葉』の短歌
6.『万葉集』の歌と『古今集』の歌の相違について
7.お伽噺としての『竹取物語』
8.『枕草子』について
9.『源氏物語』について
10.「もののあはれ」について
11.沙門道元
12.歌舞伎についての一考察
一見して明らかなように、日本精神史なるものを系統立てて論じたものではありません。和辻哲郎本人の序言によれば「日本精神史の叙述からは横道にそれ、右の諸論文(要するにこれらの作品のこと)は手を触れらるることなく数年間捨て置かれた」ものを、そのまま放置しておくのはもったいないからとりあえず刊行したということらしい。そう言われてみれば前半の仏教美術関連の数篇などは『古寺巡礼』の内容を論文形式に体裁を整えただけのような感じだし、「歌舞伎についての一考察」という時代もジャンルもまったく飛び越えた小編がまるで付録のようにくっついているのも奇異な感じがする。わたくし自身は『沙門道元』を読んでみたくて本書を購入したわけであるが、万葉集とか光源氏とかにあまり興味がないので、これなら河出文庫から出ている『道元』を買ったほうがよかったかな、と少し後悔しているところである。では肝心の「沙門道元」であるが、大正末の時代に宗教人(要するに僧侶)の立場からではない道元思想を論じたことについてのは先駆的であったと思うし、こんにちの道元本と比較してもひけをとらない内容のように思う。ただ一点、有名な「一切衆生悉有仏性」の解釈で「悉有の有を絶対的な有として、あらゆる相対的な有の上に置く」という一文(P326)には疑問をもった。しかも絶対的の部分にわざわざ点を打って強調してあるのである。さらにこの有は「因果性に縛られない。時間を超越し、差別を離れる」と続く。まさかブラフマン?んなわけないんであるが、わたし自身自信がないのでこれについては何とも論評できない。和辻哲郎には『続日本精神史研究』もあって収録された論文名から推察するにこちらの方が体系だった論考集のようにも思えるが、残念ながら文庫化はされていない。本書は飛鳥奈良時代の仏教思想から平安朝の文学、さらに江戸時代の歌舞伎まで、これらを万遍なくカヴァーできる教養人・知識人向けかと思われる。
1.飛鳥寧楽時代の政治的理想
2.推古時代における仏教受容の仕方について
3.仏像の相好についての一考察
4.推古天平美術の様式
5.白鳳天平の彫刻と『万葉』の短歌
6.『万葉集』の歌と『古今集』の歌の相違について
7.お伽噺としての『竹取物語』
8.『枕草子』について
9.『源氏物語』について
10.「もののあはれ」について
11.沙門道元
12.歌舞伎についての一考察
一見して明らかなように、日本精神史なるものを系統立てて論じたものではありません。和辻哲郎本人の序言によれば「日本精神史の叙述からは横道にそれ、右の諸論文(要するにこれらの作品のこと)は手を触れらるることなく数年間捨て置かれた」ものを、そのまま放置しておくのはもったいないからとりあえず刊行したということらしい。そう言われてみれば前半の仏教美術関連の数篇などは『古寺巡礼』の内容を論文形式に体裁を整えただけのような感じだし、「歌舞伎についての一考察」という時代もジャンルもまったく飛び越えた小編がまるで付録のようにくっついているのも奇異な感じがする。わたくし自身は『沙門道元』を読んでみたくて本書を購入したわけであるが、万葉集とか光源氏とかにあまり興味がないので、これなら河出文庫から出ている『道元』を買ったほうがよかったかな、と少し後悔しているところである。では肝心の「沙門道元」であるが、大正末の時代に宗教人(要するに僧侶)の立場からではない道元思想を論じたことについてのは先駆的であったと思うし、こんにちの道元本と比較してもひけをとらない内容のように思う。ただ一点、有名な「一切衆生悉有仏性」の解釈で「悉有の有を絶対的な有として、あらゆる相対的な有の上に置く」という一文(P326)には疑問をもった。しかも絶対的の部分にわざわざ点を打って強調してあるのである。さらにこの有は「因果性に縛られない。時間を超越し、差別を離れる」と続く。まさかブラフマン?んなわけないんであるが、わたし自身自信がないのでこれについては何とも論評できない。和辻哲郎には『続日本精神史研究』もあって収録された論文名から推察するにこちらの方が体系だった論考集のようにも思えるが、残念ながら文庫化はされていない。本書は飛鳥奈良時代の仏教思想から平安朝の文学、さらに江戸時代の歌舞伎まで、これらを万遍なくカヴァーできる教養人・知識人向けかと思われる。
2017年3月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ありがとうございました。じっくり読みたいですが文庫本って文字が小さいですね
2013年6月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
日本人の精神的な基盤を理解するためには、最適な参考書となります。特に日本に仏教が伝来したときに、日本人は
仏をどのような受け入れたかについての説明は参考になりました。
仏をどのような受け入れたかについての説明は参考になりました。
2011年6月13日に日本でレビュー済み
この本の今日的評価については、巻末の、加藤周一氏による
「解説」が的を射ていると思われます。
今からふり返ってみれば、先駆者の仕事の当時において
独創的な面にも、今日では学界の常識となったものがある。
・・たとえば『源氏物語』の成立について、今日われわれが
大野晋氏を通して知っていることは、和辻が問題を提起した
一九二二年当時とはくらべものにならない。・・たとえば
「沙門道元」は道元の思想の全貌を尽さない。しかし道元の
人格との対決をふまえて、著者が自分自身の言葉で相手の
知的世界を批判的に理解しようとした態度は、決して古く
ならない・・(p.396)。
簡単に言ってしまえば、学問的には大いに古い面があるのは
否めない、しかしその探求の態度は古びない、ということで、
今日和辻を読む者は、それを念頭に置いた方がよい、
というアドバイスを 加藤氏は して下さっているのだと思います。
「解説」が的を射ていると思われます。
今からふり返ってみれば、先駆者の仕事の当時において
独創的な面にも、今日では学界の常識となったものがある。
・・たとえば『源氏物語』の成立について、今日われわれが
大野晋氏を通して知っていることは、和辻が問題を提起した
一九二二年当時とはくらべものにならない。・・たとえば
「沙門道元」は道元の思想の全貌を尽さない。しかし道元の
人格との対決をふまえて、著者が自分自身の言葉で相手の
知的世界を批判的に理解しようとした態度は、決して古く
ならない・・(p.396)。
簡単に言ってしまえば、学問的には大いに古い面があるのは
否めない、しかしその探求の態度は古びない、ということで、
今日和辻を読む者は、それを念頭に置いた方がよい、
というアドバイスを 加藤氏は して下さっているのだと思います。
2013年8月23日に日本でレビュー済み
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今、政治が激動の時代であるからこそ、このような古典を勉強したいと思ったのです。若い方々にも是非読んでほしいと思います。
2007年1月27日に日本でレビュー済み
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収録されている論文は飛鳥時代の政治的な理想から源氏物語や道元を経て歌舞伎にいたるまで多岐にわたる。したがって、日本精神の歴史を一貫して構造的に叙述したものではない。しかし、どの文章も伝統文化的作品や思想などがその時代精神を具現したものだという立場で貫かれている。日本精神の流れの中で各対象はいかなる位置にあるのか。
和辻の文章のすばらしいところは、豊富な知識や見識と柔軟にして明快な叙述との一致にある。それを可能にするのは鋭い感受性であろう。対象の直観的情的把握は生硬な叙述を許さないからである。なかでも白眉は「沙門道元」である。道元の高尚にして簡潔な紹介としてはいまだに最適のものだと思う。あまり知られていないが、この一編は若き日の小林秀雄が讃嘆し、愛読したものであった。日本人でもこのような文章を書ける「学者」がいるのだということに鼓舞されたのである。後の比類なき小林の「批評」精神の形成に和辻の「学問」が大きく寄与していたということ、これもまた美しい日本精神の「歴史」の一端であるにちがいない。
和辻の文章のすばらしいところは、豊富な知識や見識と柔軟にして明快な叙述との一致にある。それを可能にするのは鋭い感受性であろう。対象の直観的情的把握は生硬な叙述を許さないからである。なかでも白眉は「沙門道元」である。道元の高尚にして簡潔な紹介としてはいまだに最適のものだと思う。あまり知られていないが、この一編は若き日の小林秀雄が讃嘆し、愛読したものであった。日本人でもこのような文章を書ける「学者」がいるのだということに鼓舞されたのである。後の比類なき小林の「批評」精神の形成に和辻の「学問」が大きく寄与していたということ、これもまた美しい日本精神の「歴史」の一端であるにちがいない。
2022年9月14日に日本でレビュー済み
本作は歴史的名著の一つであるとされています。
問題は、例えば、解説の加藤氏の視野に入らなかったものがあるのではないか、ということだと思います。
それにしても、これが、欧米思想移入中・後の『日本精神史』の試みであるとは、知的記述の昇華としての「エッセイ」の集成であるだけに、『研究』という題を付けることは、後世の評価を待つ冒険だったのでしょう。あるいは、これを以て嚆矢としてはならなかったのではないでしょうか。「正・續」ともに読み通してみて、読者は、こんなものか、と思ったでしょう。しかし、「史」である資格を問わねばならなかった、のかも知れません。
例えば、波多野精一先生の『西洋哲学史要』、『宗教哲学序論』という表記などが思い出されます。
問題は、例えば、解説の加藤氏の視野に入らなかったものがあるのではないか、ということだと思います。
それにしても、これが、欧米思想移入中・後の『日本精神史』の試みであるとは、知的記述の昇華としての「エッセイ」の集成であるだけに、『研究』という題を付けることは、後世の評価を待つ冒険だったのでしょう。あるいは、これを以て嚆矢としてはならなかったのではないでしょうか。「正・續」ともに読み通してみて、読者は、こんなものか、と思ったでしょう。しかし、「史」である資格を問わねばならなかった、のかも知れません。
例えば、波多野精一先生の『西洋哲学史要』、『宗教哲学序論』という表記などが思い出されます。